検証/三木・ランバー破産問題㊦

責任の所在など総括を
住田型林業の再生に向けて


 三木とランバーへの融資金について、町は両事業体の代表理事らに催告書を出すなど、一括返済か、今後の具体的な返済計画を書面でまとめるよう求めてきた。今年4月には、三木側から債務の返済ができず、現状の資金繰りも厳しいとの報告を受けていた。
 三木が解散する──。5月下旬、にわかに情報が飛び交った。〝Xデー〟とされた日には、関係者が事務所に集まり、協議を終えて足早に出てきた理事からは「解散が決まった」との声が漏れた。
 その時点で、従業員らは何も聞かされていなかった。今後どう動けばいいのか指示が出ず、理事に対して反発の声が相次いだ。従業員の一人は「あの時は解散の報告だけ。その後のことは何も言われなかった」と振り返る。
 結局、三木は町の聞き取りに対して「資金繰りが厳しいことから今後の方向性について協議し、弁護士に相談し将来の方向性を決めていくとの方針を確認した」と報告。聞き取り後、理事の一人は「従業員の雇用対策抜きに解散なんてことは言えない。それは対策を練ってから決めること。事業を続けたいのが本音」と解散騒動については否定したが、それから2カ月後の7月末、三木とランバーは事業継続を断念した。

 現在、ランバーはけせんプレカット事業協同組合の製材工場、三木は集成材工場として稼働し、両事業体から受け入れた43人の従業員は再びそれぞれの工場で働いている。両事業体が事業停止に至った7月末の段階で〝移籍〟は固まっていた。
 町議会9月定例会一般質問では、プレカットによって事業が継続されて「一本化」したことにより、木工団地が設立当初に描いていた「あるべき姿」「本来の姿」になったという声が、複数の議員から聞かれた。
 今回の両事業体の破産に際して町当局は、プレカットが両事業体の従業員の雇用を含め、事業を継続したことに対して「地域の林業、木材産業への影響を最小限に抑えていただいたものと捉えている」との見解を示した。
 プレカットの泉田十太郎理事長は東海新報社の取材に対し、平成5年の設立から27年間で「出口は出来上がっている」と、川下部分は盤石だとしたうえで「林業日本一を『目指したい』ではなく、日本一にしていかなければならない。川上部分がつながれば住田ならではの、日本有数のシステムとなる」と語った。
 従業員の雇用が確保され、林業者への影響も最小限に抑えられたが、両事業体の設備は老朽化が激しい。町やプレカットは国に設備更新への補助を求めていくが、泉田理事長は「単独でもやる覚悟」と力を込める。
 神田謙一町長も一般質問答弁で「雇用を守り、事業継続、林業への影響をいかに最小限にとどめるかという中で、理事長と当町で話を進めてきた。本当に大きな決断をいただいたと思っている。理事長との話の中で共通しているのは、目指すべき、本当の事業体の一本化につながった。あるべき姿を発展させていくというところ」との共通認識を示している。

 融資金や立木未収金の回収を巡り、両事業体や連帯保証人との調停では、連帯保証人側から示された支払額と町の債権額の間に大きな開きがあり、折り合いがつかなかったとされる。
 この間、全員協議会などの場で、調停の動きについて説明を受けていた町議の間には、仮に調停が成立した場合でも、そのまま事業を継続できるか疑問視する空気があった。
 売上額が大きい三木は黒字ではあるが、資金繰りが非常に厳しい状態。調停が成立すると、借金返済を免れ、その免除された分は収益となる。これに伴い税負担が増大し、「納税できずに倒産するのではないか」との声も聞かれた。
 町は「融資金は回収する」「事業は継続させる」「雇用は確保する」など、相反する命題ともいえる二重三重の鎖に縛られ続けてきた。近年は、融資金の回収が不透明であり続けた。
 住民向け説明会では、融資金を回収できないことによる町財政への影響を指摘する住民もいた。これに対し町は、融資財源はもともと産業振興を見据えた基金によるものであり、住民サービスへの直接的な影響はないとの見方を示す。
 しかし、住民が税金を滞納すれば、町当局はすぐに支払いを求め、状況によっては差し押さえも行う。未収金対応への不公平さを指摘する声も少なくない。
 さらに、今回の破産で、地元内外の取引先にも少なからず損失が生まれた。町の基幹産業である林業において、経済的なダメージだけでなく、信頼関係にも影響を及ぼす。
 町はもともと、事業体の危機を救済し、安定経営下で生まれた利益からの償還を描いていた。結果的に今、債権回収は非常に厳しい状況に陥っている。

 さまざまな事情が絡み合い、長年、町政の重要課題であり続けた三木・ランバー問題。両事業体の経営陣の責任はもとより、かつての突然の赤字計上の詳細についてや経営再建のための巨額公的融資の妥当性、10年以上にわたり債権回収に向けた管理が行き届いていなかった町の責任など、さまざまな問題の本質、責任の所在を総括し、その結果を町民につまびらかにしていくことが、多くの血税を投入した「貸し手側」と3度にわたる融資議案を可決した町議会が果たすべき義務ではないか。
 「森林・林業日本一」を掲げるならば、三木・ランバー問題への反省を一体化した事業体の経営に反映させ、住田型林業が再生した姿を全国に発信していく努力が求められる。=終わり