2020気仙この一年/記者の取材ノートより②【新型コロナウイルス㊦】

▲ 1人10万円給付に向け、各市町では関係書類を封詰めする作業に追われた(5月3日、大船渡市)

 新型コロナウイルスの影響は、観光業や飲食業を皮切りに、製造業や小売り、建設業などあらゆる分野に深刻な影を落とした。4月に出された緊急事態宣言による収入減少などを受け、政府は住民1人に一律10万円を支給する特別定額給付金事業を展開。各市町村で事務手続きにあたり、8月までに対象の99%以上に支給を終えた。
 売り上げが半減以上に落ち込んだ事業所には、上限200万円の持続化給付金でも支援したほか、家賃給付制度も設け、緊急的な資金不足を支えた。一方、いずれもオンラインでの申請が基本となり、高齢の経営者や小規模事業者などからは戸惑いの声も聞かれた。
 夏場以降、政府は「GoTo」事業を実施し、旅行や飲食の回復を後押し。これを受け、秋には旅行者数増の動きが見られたが、感染が再び拡大した先月以降は再び動きが鈍くなり、正念場を迎えている。

 

事業所30万円支援に振興券配布も/大船渡市

 

 大船渡市は独自策として、5月からは売り上げが減少した事業所やNPO法人に一律30万円を給付する「事業継続支援金」事業を進めた。今年3~6月のいずれかの月で、前年同月よりも売り上げが減少していることが分かれば交付決定とした。
 宿泊業や飲食店を皮切りに、段階的に対象業種を拡大し、医療機関やNPO法人なども支えた。中小企業を中心に1425件に交付し、支給総額は4億2000万円を超えた。
 消費喚起策として「ふるさと振興券」事業も立ち上げ、市内全世帯に1万円分の配布を進めた。利用店舗は、小規模事業所を中心に380店舗超に上る。宿泊観光回復事業「大船渡に泊まってHappy!大作戦」でも、最大5000円分の助成で利用を促した。

 

スピード重視の対策展開/陸前高田市

 

 陸前高田市は国、県からの支援のすき間をカバーしようと、スピード感ある独自支援を展開している。5月の大型連休前に、宿泊業や飲食業など90事業者に最大30万円の支援金を支給。7月には商工業者に最大30万円、農林漁業者に最大20万円を配る支援も始めた。
 6月からは、外出自粛で巣ごもりがちな独居高齢者の見守り支援などを目的に、週に1度自宅に夕食を届ける配食サービスを4カ月間行った。感染拡大で家族による見守りが困難な高齢者や障害者、子どもを一時的に預かる事業も実施している。
 同市観光物産協会は、観光周遊パスポート「高田旅パス」事業で、観光業の需要回復を図っている。陸前高田商工会は、1セット7500円分を5000円で販売する「プレミアム商品券」6000セットを発行した。

 

町内での経済循環を後押し/住田町

 

 住田町では5月末、新型ウイルス感染拡大の影響を受けている町内飲食店を支援するプレミアム率100%の「食べて応援住田チケット『すみチケ』」を5000セット販売。
 その後、町と町商工会が行った事業所アンケートにおいて、幅広い業種が新型ウイルスによる何らかの影響を受けていることから、町では「すみチケ」から利用用途を大幅に拡大した「使って応援住田チケット『すみチケ+』」を9月下旬に1万621セット販売し、町内での経済循環を図った。
 加えて、感染予防対策の徹底や新たな取り組みへの着手などを行う事業者に対して、1事業者当たり最大で100万円を交付する「住田町プラスアップ事業協力金」、全世帯への光熱費2万円支給、全町民へ一律2000円のインフルエンザ予防接種費用助成などを実施している。