2020気仙この一年/記者の取材ノートより⑥【基盤整備】

▲ 水門・陸こう自動閉鎖システムを導入した気仙川水門

県の復興事業も各所で進む
防潮堤や道路の工期延伸も

 

気仙川水門が完成、供用開始

 

 陸前高田市の気仙川河口部では3月末、津波対策として整備が進められていた「気仙川水門」が一部を除き完成。その後、「水門・陸こう自動閉鎖システム」が導入され、今月21日に供用を開始した。
 気仙川水門は、数十年から百数十年に1度発生する津波を想定して堤防高をT・P(東京湾平均海面)+12・5㍍とし、震災前の護岸の堤防より7㍍高くした。延長は211㍍で、県内でも最大級の水門となった。
 高田海岸の防潮堤と接続し、周辺の津波防御ラインを確保。水門・陸こうは、国が発令する津波注意報・警報を県が全国瞬時警報システム(Jアラート)で受信すると、衛星回線を通じて自動的に閉鎖される。

 

中心市街地の公園も復旧果たす

 

 大船渡市大船渡町の中心市街地では、8月に大船渡港野々田地区緑地公園(愛称・サン・アンドレス公園)が、11月には茶屋前地区港湾緑地「みなと公園」が復旧を果たし、供用を開始した。
 サン・アンドレス公園は震災前と同じ規模で、園路や芝生、舗装部分などは復旧し、公園のシンボルでもある展望台は、修復して再利用。複合遊具、あずまや、トイレも設けられた。親子連れでの利用も多く、来年6月に延期された東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレールートにも設定されている。
 みなと公園は、公園部分の面積は震災前とほぼ同じだが、防潮堤を挟むように盛り土をし、高さ7・5㍍の築山を造成。頂上に大船渡湾内を眺望できる「展望広場」を、海側には「テラス広場」を設けるなど、臨港道路を挟んで隣接する市の夢海(ゆめみ)公園との一体的な活用も見据えた。

 

3市町10カ所で最長1年の遅れ

 

 県による復旧・復興事業のうち、大船渡市三陸町越喜来の崎浜漁港海岸で3月に、陸前高田市広田町の六ケ浦漁港海岸で9月に、それぞれ防潮堤が完成。同町を走る主要地方道大船渡広田陸前高田線は、8月に久保~泊区間が完成し、広田半島内の4工区すべてで工事が完了した。
 一方、大船渡市の海岸保全施設4カ所と主要地方道や一般県道4カ所、陸前高田市と住田町の国道1カ所ずつの計10カ所は整備が遅れ、完成時期が延びる。最長で令和4年3月までずれ込み、本年度末で終了する復興・創生期間内での完成が見込めなくなった。

 

架け替えに向け工事進む昭和橋
住田町

 

 県の治水対策の一環で架け替えを控えている住田町の昭和橋。現橋の解体に向けて歩行者専用の仮橋の工事が進む。
 これに並行して、新橋設置に向けた周辺の用地整理の手続きも実施中。仮橋完成後は手続きが済み次第、現橋の解体に移る。
 仮橋は、現橋の解体工事が始まってから通行が可能となる。工事は今後も、気仙川の稚魚放流時期やアユ漁解禁期間を避けながら進められていく。