2020気仙この一年/記者の取材ノートより⑦【産業振興】

▲ 三木、ランバーは現在、プレカットの工場として稼働

三木、ランバーが破産
サンマや秋サケ不漁続く

 

事業継続断念
町内に衝撃 住田

 

 住田町から多額の融資を受けていた世田米の三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)が、資金繰りの厳しさなどを背景に事業継続を断念。7月31日付で盛岡地方裁判所一関支部に破産を申請し、8月14日付で破産手続き開始決定を受けた。
 町が掲げる「森林・林業日本一のまちづくり」の〝中核〟として設立され、多額の公的融資を受けて再建を進めていた両事業体の破産は、町内に大きな衝撃を与えた。
 両事業体の破産申請後、ランバーはけせんプレカット事業協同組合の製材工場、三木は集成材工場として稼働しており、両事業体から受け入れた43人の従業員は再びそれぞれの工場で働いている。
 雇用と事業の継続が確保された一方、両事業体に対する総額13億円超の町の債権がどうなるかは不透明。債権回収に向け、町は両事業体の連帯保証人とその相続人計19人に対し、融資の未返済分や利息など合わせて約10億5000万円の支払いを求めて提訴した。
 提訴後、町は11月9日から13日にかけて町内5地区で住民説明会を開催。平成29年の調停申し立てから破産手続き開始決定、両事業体の連帯保証人とその相続人に対する提訴に至るまでの経過を説明したが、住民側からは貸し手である町の責任や提訴の是非を問う声が相次いだ。
 一方、同24日に盛岡地裁一関支部で開かれた第1回債権者集会では、両事業体に対する債権総額が約16億円に対し、両事業体の資産額は現段階で合わせて約8800万円とされ、債権整理による配当で町が有する債権の全額回収は厳しいことも分かった。今後の債権者集会は、三木が来年2月、ランバーが3月に開かれる予定。


主力魚種の不漁
今年も影響深刻

 水産業では今年も、主力魚種の不漁傾向が続いた。
 全国さんま棒受網漁業協同組合によると、大船渡市魚市場への11月30日現在のサンマ水揚げ量は前年同期比4%減の5633㌧。過去にない厳しい不漁となった昨年の実績を下回り、2万㌧を超えた10年前(平成22年)の3割以下となった。
 全国的にも水揚げが大きく落ち込んだ中で単価が高騰し、金額は26億4010万円と前年同期比で38%上昇した。今季も数量、金額とも、本州トップを維持する見込み。ただ、数量減は水産加工業や製氷、魚箱、運送といった分野にも影響を及ぼすだけに、持続可能な資源確保策の重要性が高まっている。
 一方、本県沿岸漁業の主力である秋サケ漁は、6年連続の不漁となっている。県の漁獲速報によると、大船渡の今月10日現在の水揚げ量は同13%増加。県全体の沿岸・河川累計捕獲数は39万1262匹で、前年同期の74・4%にとどまり、5年平均でも15%程度にとどまる。
 さらに、イサダも記録的な激減に見舞われた。同魚市場への水揚げ量は605㌧で、前年の1割ほど。4月に水揚げがないなど異例のシーズンとなった。養殖分野でもホタテやホヤなどが、長期間にわたり貝毒による出荷規制を受けた。


商業施設のカモシー開業
陸前高田

 

 陸前高田市のまちづくり会社「醸(カモシー)」(田村滿社長)が、気仙町今泉地区に整備した商業施設「陸前高田 発酵パークCAMOCY(カモシー)」は今月17日に開業した。
 施設内には▽パン店▽食堂▽食品店▽チョコレート製造・販売▽クラフトビール醸造所▽弁当・総菜店──などの八つの店が入る。いずれも「発酵」をテーマに据えた商品・料理、サービスを展開する。キッチン併設のコミュニティースペースも設けた。
 また、同町今泉北地区では、外食チェーン大手のワタミ㈱(本社・東京都大田区、渡邉美樹代表取締役会長兼グループCEO)が手掛ける農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」第1期工事が行われている。事業予定地23㌶のうち、モデルエリア(3・3㌶)を先行整備し、来年3月の一部開業を目指す。