米崎にピーカンナッツの苗木育成施設 年度内の完成目指す 栽培法探る研究棟も整備
令和3年1月7日付 7面

陸前高田市は、米崎町の市有地で北米原産のピーカンナッツの苗木育成研究施設を整備している。国内で栽培に取り組んでいる例はほとんどなく、高収益が期待される作物。施設は本年度内の完成を予定し、取り寄せた国産苗木の増産、育苗を試験的に行う。将来的には年間1000本程度の苗木生産を目指し、産地化に向けた栽培普及に取り組む。
建設地は総合営農指導センターやライスセンター西側で、平成29年に閉鎖したレタス栽培施設跡地の一角。
施設は、木造平屋の研究棟(広さ約100平方㍍)、育苗用の木骨ハウス(同208平方㍍)の計2棟。事業費は5863万円で、昨年10月下旬に着工した。施工は㈱佐武建設、設計・監理は㈱後藤組設計室が請け負っている。
今春、数百本の苗木を仕入れ、研究棟で苗木の接ぎ木などを試験的に行い、ハウスでポット苗を育てる。年度内の設立を検討している産地化推進を担う団体に運営を委託する計画だ。
ピーカンナッツはクルミ科落葉樹の実で、国内ではアーモンドの100分の1程度の消費量しかない希少性を持つ。栄養価が高く、アルツハイマー病予防にも効果があるとされる抗酸化物質を含む。
市は新たな産業の創出、地方創生に向け、平成29年7月、東京大やピーカンナッツを使ったチョコレート製造・販売業を手がける㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市)との3者で、共同研究にかかる連携協定を締結した。
昨年4月には、横田町、米崎町の畑2カ所で苗木の試験栽培を開始。植えているのは鹿児島県指宿市から取り寄せた9品種90本で、同市の気象条件に適した品種や適切な栽培法を探っている。生育は順調で、昨年秋までの半年間で平均40、50㌢伸び、高さが1㍍近くになった。早ければ来年秋にも実の収穫を見込む。
苗木から安定的に実を確保できるようになるまでには、5〜10年程度要する見通し。土地区画整理事業低地部などにモデルほ場を設けて普及にも当たる。
また、市は中心市街地にピーカンナッツの加工・販売拠点を一体整備する。令和3年度着工、4年度の開業を計画し、6次産業化を推進する。
市農林課の大和田智広課長補佐は「長期的なプロジェクトで、どのように苗木生産していけるか、農場を拡大できるか、走り出した現時点で具体的な見通しを示すのは難しい。しかし唯一無二の特産品となる可能性を秘めており、まずは試験栽培地で実がなるようしっかり経過を観察していく」と展望する。