マスク姿で子に迫る 「たらじがね」勇ましく 三陸町越喜来崎浜地区の小正月行事(動画、別写真あり)

▲ マスク姿で子どもに迫った「たらじがね」

 大船渡市三陸町越喜来崎浜地区で受け継がれる小正月行事「たらじがね」が10日夜、地区内で行われた。鬼に扮(ふん)した地区の若者たちは、子どもたちの健やかな成長に期待を込めながら、勇ましく各家庭に〝乱入〟。「今年の象徴」として、鬼の面にはマスクをつけ、新型コロナウイルスの退散も願った。
 崎浜地区では古くから、頑固で怖いおじいさんを「じがね」と呼ぶ。米俵(たら)を身につけた「じがね」のお年寄りが、泣き虫や意地悪な子どもたちをいましめ歩いたことが由来とされる。
 昭和から平成にかけて30年以上途絶えていたが、20年ほど前に地区内で保存会(瀧澤英喜会長)が立ち上がり、大漁や五穀豊穣(ほうじょう)を願い災難を払う1月の小正月行事として定着。東日本大震災による休止の時期もあったが、今も伝統をつないでいる。
 この日は地区内に住む30代の男性5人が、鬼に扮した。崎浜公民館での準備作業では、装束を身につけるだけでなく、鬼の面にはマスクをつけるなど、感染防止も徹底。小学生以下の子どもがいる5軒を訪問した。
 わらみのをつけ、腰に貝殻を下げた鬼たちは、玄関の扉をたたき「ゆうごどきがねぇわらすっこいねぇが」「ユーチューブばかり見ているこはいねぇが」などと叫んでは、居間などを歩き回った。
 漫画『鬼滅の刃』の主人公が着る羽織の市松模様のマスクなどをつけた子どもたちは、すぐに泣き出し、住宅内は騒然。鬼たちは間近で「いい子になるが」「母さんのいうごと聞ぐが」と約束を迫り、泣きじゃくりながらうなずく姿を確認すると「コロナさもかがるなよ」と言い残して姿を消した。
 涙をこらえた越喜来小2年の中嶋妃那さんは「怖かった。家の人のいうことをちゃんと聞くようにする」と話していた。
 瀧澤会長(63)は「何もかも簡素化すれば、住んでいる人たちの気持ちも簡素化してしまう。地域に若い人たちがいて、子どもたちがいる限り、続けていくことができれば」と話していた。