ウニの畜養モデル構築へ 県が綾里湾で移植調査 海の過剰生息を適正管理(別写真あり)
令和3年1月14日付 1面

県は13日、本県沿岸で過剰に生息しているウニを海中から畜養施設に移植し、生息密度の適正化と漁業者の新たなウニの畜養・出荷モデルの構築につなげる調査を大船渡市三陸町綾里の綾里湾で始めた。調査は綾里漁協(和田豊太郎代表理事組合長)に委託して行う。近年は餌となる海藻が不足し、実入りの悪いウニが増加していることを受け、海中から間引き、畜養施設で人工的に餌を与えて実入りの変化を調べ、結果を基に今後の事業展開を検討する。
県沿岸広域振興局水産部大船渡水産振興センターの職員や同漁協組合員、NPO法人・三陸ボランティアダイバーズのスタッフらが小型漁船3隻に乗り込み、湾内のウニ約1000個を採り、綾里漁港に設置されている畜養施設に移植。このうち50個を殻むきした結果、実入りの状況を示す「生殖腺指数」の平均は2・4(速報値)と低いことが浮き彫りになった。
本年度、県は「黄金のウニ収益力向上推進事業調査業務」として、久慈地域と宮古地域でも同じ調査を実施。綾里では今後、畜養施設のウニに塩蔵コンブを餌として与え、1カ月後と2カ月後に生残率や実入りの変化を確かめる。結果を踏まえ、来年度以降の事業の検討に生かしたい考えだ。
綾里の畜養施設は海と接し、人工のコンクリートで区切られたもともとあった畜養池(約500平方㍍、深さ約3㍍)を活用。池の中はウニの生息には適さない砂地部分もあるため、生息しやすいように工事の廃材のコンクリートブロックを投入して環境整備した。
同センターの山野目健上席水産業普及指導員は「畜養したウニが販売できるかどうかを含めて調査し、『やせウニ』の有効活用を図り、出荷モデル構築と漁業者の収入アップにつなげたい」と見据える。
綾里湾でも近年は天然のコンブの芽が出るこの時期になっても海水が適温の7~8度まで下がらないこともあり、ウニの行動力が落ちず、芽を食べてしまうことで磯焼けが起きている。
ウニの過剰な生息と磯焼けは、海藻を餌とするアワビ漁にも影響している。漁業者の「冬のボーナス」とも言われるアワビ漁だが、綾里湾では近年、数量が減り、育ちが悪い「やせアワビ」の割合も高いため、同漁協では一昨年と昨年はアワビ漁の開口を見送った。
移植により、海中の藻場造成や畜養したウニの出荷につなげ、漁業者の収入面でも効果を見いだせるか注目される。
同漁協の和田組合長は「ウニをただ駆除するのではなく、適正管理して成果を見極めたい。畜養することで資源を有効活用し、販売、利益につながればありがたい」と期待を込める。