津波犠牲者「忘れない」 今泉足軽組後裔者会 かさ上げ地に慰霊碑建立(別写真あり)

▲ 慰霊碑の魂入れの法要に参列し、津波の犠牲となった会員を追悼

 陸前高田市気仙町の仙台藩直参今泉御足軽御組後裔者会(佐々木茂会長)は、同町の龍泉寺そばに東日本大震災の津波で亡くなった会員14人を悼む慰霊碑を建立し、17日、現地で魂入れの法要を行った。今泉地区の土地区画整理事業に伴い、一時撤去していた同会の「庚申(こうしん)塔」を元の場所に戻し、これに合わせて慰霊碑を隣に建てた。震災発生から10年を前に、待望の碑が地元に完成し、会員らは「あなたたちを忘れない」と静かに手を合わせた。

 法要には会員13人が参列。同寺の江刺秀一住職が読経する中、一人一人が慰霊碑の前で焼香し、物故会員の冥福を祈った。
 同寺仮本堂では毎年行う供養式が営まれ、先祖の霊をしのんだ。今泉地区コミュニティセンターに移動後、第44回定期総会を開き、今年の事業計画を決めた。
 碑は気仙川右岸側のかさ上げ地に建立。御影石製で幅約1㍍80㌢、高さ約1㍍40㌢。「魂」という文字や犠牲者14人の名前を刻んだ。
 今泉御足軽御組は、約400年前の江戸初期に置かれたとされる。仙台藩から火縄銃を与えられた由緒ある鉄砲組で、気仙郡内や南部藩境の警護に当たった。
 後裔者会は、足軽組初代24人の子孫らが昭和53年に設立。家々に伝わる古文書を解読して歴史を検証するとともに、史跡や関係史料などの保存継承に努めている。
 震災の津波で今泉地区は壊滅的な被害を受け、自宅や武具、古文書なども流された。会員は市内外に散り散りとなりながらも組織を存続し、毎年供養の会を開いている。
 一方、庚申塔は津波をかぶったものの無事残り、土地区画整理事業に伴うかさ上げ工事のため一時撤去。工事が完了したため本来の場所に戻し、「物故会員に思いを寄せるとともに津波の教訓を後世に伝えよう」と昨年11月、隣に慰霊碑を建てた。
 今年は足軽組にまつわる史料の掘り起こしに当たる。鉄砲の練習場(的場)があったことを伝える標柱の建立も計画している。
 佐々木会長(65)=竹駒町=は「区画整理の計画が二転三転し、庚申塔の移設、慰霊碑の建立に10年かかった。ようやくという思いだ」と語り、「津波で亡くなった会員と教訓を決して忘れてはいけない。慰霊碑があれば次の世代にもつなげられる」と安どしていた。