誇るべき軌跡 伝えたい 気仙歴史文化研究会 「通史」の編集大詰め

▲ 「気仙の通史 100項目」(仮称)の編集作業にあたる気仙歴史文化研究会のメンバー

 先人が築いた郷土の歴史を学び、後世に伝えていこうと活動する「気仙歴史文化研究会」(甘竹勝郎会長)は、その集大成となる「気仙の通史 100項目」(仮称)の発刊を目指している。3月完成の見通しで、会員は現在、詰めの編集作業に打ち込む。「不屈の精神で幾多の困難を乗り越えてきた先人の営みや、誇るべき文化を伝えたい」と、熱意をもって取り組んでいる。
 同研究会は東日本大震災で多くの歴史的資料が被災した中、これらを整理しながら、先人が築いた郷土の歴史を学び、後世に伝えていこうと、前大船渡市長の甘竹勝郎さん(77)=同市盛町、元陸前高田市教育委員長で現在は同市立博物館長の松坂泰盛さん(76)=同市気仙町、元住田町教育委員長の千葉英夫さん(77)=同町世田米、合併前の旧三陸町と合併後の大船渡市で助役を務めた中村隆男さん(77)=同市三陸町越喜来=の4人が中心となって平成29年8月に結成。
 甘竹さんと松坂さんは高校、千葉さんは中学校で社会科などの教べんをとって郷土史への造詣も深く、中村さんは特に旧三陸町政に精通。それぞれ要職を引いたあとも、地域の歴史をひもとく活動などに取り組んでいる。会の結成以来、4人で気仙地区内外の史跡などに足を運び、先人の歩みをたどってきた。
 その集大成となる「気仙の通史 100項目」は県文化振興事業団や気仙2市1町の助成も受けてまとめる。石器時代から平成まで、中央の歴史を照らし合わせながら気仙のできごとを解説する。
 子どもからお年寄りまで幅広い世代が興味を持って親しめるよう、「分かりやすい書き方」(甘竹会長)を心がけ、週に数回、大船渡市猪川町内の事務所に集まりながら編集作業を行っている。
 甘竹さんは「金山や豊かな漁場に恵まれた一方、米づくりなど農の面では苦しんできた歴史がある。これに向き合い、いままでつながれてきた先人の不屈の精神と努力は誇るべきものだ」と語る。
 100項目の締めくくりとなるのは、平成23年3月11日の東日本大震災。甘竹さんは「気仙は貞観、慶長、明治、昭和、平成と、大津波に見舞われたが、不屈の精神をもって乗り越えてきた。このことは次の世代にもつながねばならない」と、真剣なまなざしで作業に臨む。
 ほかのメンバーも、「『1000年の歴史を学び、1000年先を見通し、いまを生きる』という言葉をかみしめながら作業している」(松坂さん)、「漁業や産金、製鉄、養蚕など産業をおこしながら生きてきた歩みと、貴重な文化を後世に伝えたいと強く思う」(千葉さん)、「改めて歴史を掘り下げる中で、自分自身も郷土について勉強させてもらっている」(中村さん)と、熱意をもって取り組んでいる。
 全250㌻ほどとなる見込み。500部の作成を予定し、完成後は気仙地区内の官公庁や図書館、学校などに配ることとしている。