新型コロナウイルス/強まる警戒 広がる時間短縮 気仙の飲食店や商業施設 営業と感染防止の両立に苦心

▲ 苦境が続く中でも「今できることを一生懸命やる」と決意を込める阿部店主

 新型コロナウイルスの全国的な感染拡大傾向を受け、気仙の飲食店や商業施設などでは、営業時間短縮の動きが広がる。今年に入り、気仙からは感染確認者が出ておらず、行政による時間短縮要請もないが、東京都など11都府県に緊急事態宣言が発令されたことで警戒感が強まり、営業と感染防止の両立に知恵を絞る。売り上げ減少などの影響が長期化しているだけに、飲食店関係者からは「休む余裕がない」といった切実な声も聞かれる。

 

「休む余裕ない」と切実な声も

 

 陸前高田市高田町の「鶴亀鮨」(阿部和明店主)では、通常は午後10時まで営業しているが、来店客の動向をみつつ、同8時までとする日が増えた。昨年4月の売り上げは、前年同期比で半減。緊急事態宣言解除後は客数が増える時期もあったが、不安定かつ厳しい経営状態が続く。
 かき入れ時の年末年始の収入は、思うように伸びなかった。売り上げが減る2月を迎えようとする中、阿部店主(66)は「少しでも収入を得なければ。休む余裕はない」と険しい表情をみせる。
 東日本大震災で被災後、店舗再建を果たしたが、今度は新型ウイルスが経営を直撃。阿部店主は「市の事業や『Go To Eat』など、使える制度は活用している。鍋物や関西仕込みの丸かぶり(恵方巻き)をPRするなど、旬の需要を見逃さず、収入を増やすチャンスをつかみたい」と語る。
 また、鶴亀鮨を応援してくれる人たちとのつながりも大切にする。「フェイスブックやはがきなどで、今まで来てくれたお客さんとやりとりを続け、励みになっている。頑張ってくれている従業員のためにも、今できることを一生懸命やる」と力を込める。
 大船渡市内で飲食店の「すしランド」「ラーメン屋壱番亭」「ファミリーレストランほっとポット」「やまなか家」を運営するサイシングループ(齋藤安代表)は今月、閉店時刻を1時間繰り上げた。やまなか家は午後9時まで、他店舗は同8時までとしている。
 「夕食を楽しみたい」といった需要など、来店者の要望にも応えるため、1時間の短縮に。これまでも、従業員の手指消毒やマスク着用、体温などの体調管理を徹底してきたが、時間短縮によって接触機会を減らし、さらなる感染防止を図る。
 同グループでは「市中感染や影響が、いつ飛び火するか分からない」と危機感を募らせており、「とにかく、早く収束してほしい」とコロナ禍の沈静化を願う。
 スーパーマーケットを展開する㈱マイヤ(井原良幸社長)も、18日から大船渡市内に構える大船渡店、赤崎店、大船渡インター店、陸前高田市内の高田店、アップルロード店などで閉店時刻を30分~1時間早めた。大船渡市内の店舗は午後9時まで、高田店は同8時30分まで、アップルロード店では同8時までとしている。
 緊急事態宣言発令を受け、対象地域ではないが、感染防止を徹底させるため、昨年春に続き実施。夜の時間帯にしか買い物ができない地域住民らの利便性を確保するなど、住民生活に大きな影響を与えないよう配慮した。
 期間は3月14日(日)までとしているが、状況によって変化する可能性もあるという。マイヤでは「不便をかけるが、理解・協力をお願いしたい」と呼びかける。
 陸前高田市気仙町の道の駅「高田松原」は、感染拡大を受け、25日から営業時間を通常より2時間短縮し、午前9時30分~午後4時30分に変更する。
 来店者数は今月に入り、1日平均500人程度と前年同期の約3割に落ち込んでいる。通常営業に戻す時期は今後の感染状況や国の動向を見ながら決めることとしている。
 同市が昨年12月15日~今月4日、市内794事業者を対象に実施した影響調査結果(342事業者回答)によると、令和2年の事業収入が前年より10%以上落ち込んだのは144事業者、30%以上落ち込んだのは72事業者に上った。
 今後の営業に関しては、全体の約8割に当たる263事業者が「通常営業を継続する」と回答。一方で、一部は営業時間の短縮や業態変更、事業規模の縮小で、運転資金の借り入れや国の雇用調整助成金の活用などを余儀なくされ、事業継続に向けてさらなる支援が求められる。