広域連携の重要性明らかに 来館者 宮古や平泉などへ 東日本大震災津波伝承館 ゲートウェイ調査結果公表

 陸前高田市の東日本大震災津波伝承館は、県立大学総合政策学部と協働で実施した「同館を拠点としたゲートウェイ機能に関する調査」の速報結果を公表した。県内外からの来館者601人に対し、同館を起点に訪れている施設や来館理由などを調査したもの。その結果、同館を起点にこれまで訪れた(訪れてみたい)観光施設の質問回答からは、宮古市の浄土ヶ浜や平泉町の中尊寺・毛越寺など県内の広範囲を観光の対象としていることが分かり、広域連携の重要性が明らかになった。

 

 同館は、震災における県内の被害状況や教訓、復興に向けた歩みを発信しようと令和元年9月22日に開館。宮城県との県境に近く、来館者が沿岸地域へ足を運ぶ際の「ゲートウェイ機能」としての役割も担っている。
 調査は、この機能の実態を把握しようと初めて実施。県立大学による2年度地域協働研究の採択を受け、総合政策学部との協働で実現した。
 昨年9月13日〜10月31日に、同館職員らが中心となって来館者に対面形式のアンケートを行った。質問は全14問で、来館者から▽居住地や年齢▽同館の前後に立ち寄る施設▽同館を起点に訪れた、または訪れてみたい観光、伝承施設▽来館理由▽滞在時間▽同館の満足度──などをたずねた。
 速報結果によると、調査に応じた個人客601人のうち、県内からは203人(33・8%)、県外からは398人(66・2%)。県外は、宮城県を中心とした北海道・東北地区が154人(25・6%)と最も多く、次いで東京や埼玉など南関東の130人(21・6%)だった。
 同館の見学回数では、県内、県外ともに「初めて」が8〜9割を占め、リピーターも少しずつ現れている。利用交通機関は、自家用車が全体の7割を占めた。
 同館の来館前、来館後のそれぞれに立ち寄った施設などでは、宮城県気仙沼市が来館前29件、来館後47件と、ともに最多。
 来館前は浄土ヶ浜と道の駅高田松原が各18件、平泉・中尊寺17件などが続き、来館後は大船渡市27件、道の駅高田松原24件、奇跡の一本松20件など。遠方地域から伝承館に足を延ばす人が比較的多く、来館後は近隣地域への移動が目立った。
 同館を起点にこれまで訪れた(訪れてみたい)観光施設等(複数回答、別表)では、浄土ヶ浜が276人(15・7%)と最も多く、世界遺産平泉230人(13・1%)、岩泉町の龍泉洞227人(12・9%)と続いた。気仙で最も多かったのは、大船渡市の碁石海岸・世界の椿館の156人(8・9%)だった。
 伝承館を起点にこれまで訪れた(訪れてみたい)震災伝承施設等(複数回答)で最も多かったのは、同館と同じ高田松原津波復興祈念公園内にある奇跡の一本松461人(47・6%)。次いで、釜石市のいのちをつなぐ未来館115人(11・9%)、宮古市の津波遺構たろう観光ホテル108人(11・2%)、大船渡市立博物館83人(8・6%)などとなった。
 伝承館の情報入手先として多かったのは、県内がテレビ・ラジオの83人(29・9%)、県外はホームページやSNSの126人(28・8%)。県内、県外それぞれでニーズに合わせた情報発信の必要性が浮かび上がった。
 同館の満足度は、展示内容、スタッフの対応ともに「(とてもを含む)よかった」が9割を超えた。回答者からは「とても分かりやすく、丁寧な展示」「訓練の重要性を改めて感じた」「もっとPRすべき」「情報量が多く、一度に見られない」などの意見が寄せられた。
 同館の熊谷正則副館長は「県内より県外からの来館者が多く、交流人口の拡大に役割を果たしていると確認できた」としたうえで、「どうやってゲートウェイ機能をうまく使っていくか、ほかの施設と相談していく必要がある。岩手の南玄関口として、今回の調査結果をさまざまな機関と共有し、周遊や教育旅行、気仙内外の各地と連携するための基礎資料にしたい」と話している。