受験生に合格祈願の鉛筆 陸前高田の㈱山十が市内中学3年生に寄贈、前社長の遺志継ぎ 今年も

▲ 今年も高校入試突破の願いを込めた鉛筆を寄贈した伊東代表取締役㊨

 陸前高田市高田町で書店・文具店を営む㈱山十(伊東孝代表取締役)は、本年度も高校受験を控える市内の中学3年生に合格祈願のオリジナル鉛筆をプレゼントした。東日本大震災で亡くなった当時の社長で、伊東代表取締役(67)の弟・進さん(当時54)が始めた事業。震災から3月で丸10年を迎える中、伊東代表取締役は弟の遺志を引き継ぎ、「これからも地元の受験生を応援しよう」と事業継続を誓う。

 

 本年度は高田第一中、高田東中の3年生134人に、それぞれ3本セットの鉛筆を贈った。贈呈式は26日に市役所で行われ、伊東代表取締役が大久保裕明教育長に手渡した。
 寄贈は震災後一時休止したが、平成26年に再開。鉛筆は「合格(ごうかく)」にかけた五角形で、握りやすいため「すべらない」の縁起も担ぐ。進さんが中学時代に恩師から教わった言葉で、座右の銘にしていたという「努力は幸せの貯蓄なり」を印字した。
 鉛筆は今月中に2校に配る予定。大久保教育長は「受験生にとって心強い応援だ。高校受験は本人が頑張る試練だが、地元企業を含め、周囲からサポートや励ましがあるということを忘れずにいてほしい」と感謝した。
 山十は昭和36年に創業。市内唯一の本屋などとして地域に親しまれたが、震災の津波で進さんら親族を亡くし、高田町内で営業していた伊東文具店とブックランドいとうの2店舗が被災した。
 当時、会長を務めていた孝さんがかじ取り役となり、震災翌月の平成23年4月に同町内の仮設店舗で文具販売事業を再開。その後、2度別の仮設店舗への移転を経て、29年4月、新市街地のにぎわい創出の中核を担う商業施設「アバッセたかた」内に念願の店舗をオープンさせた。市立図書館に併設されている立地条件も相まって受験を控える市内の中高生も頻繁に店を利用している。
 伊東代表取締役は「3年生は受験という荒波に立ち向かうこととなる。コロナ禍で例年とは違う環境の中で勉学に励んできたと思う。全員が何事もなく合格してほしい」とエール。「事業は震災前に決めた会社の方針。発案した弟の思いを受け継ぎ、何より地元の子どもたちのためにずっと続けていきたい」と誓いを新たにしている。