現職・神田氏 「出馬、前向きに検討」  次期町長選まで約半年 対抗馬擁立の動きなし

神田謙一氏

 任期満了に伴う次期住田町長選まで、約半年となった。1期目の現職・神田謙一氏(62)=下有住=の周辺からは、再選出馬を望む声が多く、同氏はこれに対して「前向きに検討したい」としており、態度表明の時期に注目が集まる。一方、現時点で対抗馬擁立に向けた動きは見られず、早くも無競争ムードが漂っている。

 

早くも無競争ムード漂う

 

 住田町長の任期満了は8月4日。平成29年の前回選挙は「7月18日(火)告示、同23日(日)投票」の日程で行われており、次期町長選も7月下旬の日曜日投票の日程が有力視されている。
 現職の神田氏は、日本獣医畜産大学大学院修士課程修了。昭和59年に住田町農協に入り、合併した陸前高田市農協を経て、平成19年に住田フーズ㈱取締役生産部長、24年に同社常務取締役に就いた。
 4期を務めた多田欣一氏=世田米=が勇退を表明し、16年ぶりに「新リーダー」を選ぶこととなった平成29年の町長選に初出馬。企業経営にかかわってきた人脈と経験を生かし、多田氏の支持者を取り込みながら選挙戦を進め、町議を辞して臨んだ水野英哉氏(65)=上有住=との一騎打ちを144票差という僅差で制した。
 神田氏は就任後、「住民生活の基本である『医・食・住』の充実」を掲げて町政運営に取り組み、各分野で独自カラーを打ち出してきている。
 一方、木工団地2事業体の破産問題を巡っては、合わせて約13億円にものぼる債権回収に向け、昨年10月、両事業体の連帯保証人とその相続人計19人に対して融資の未返済分や利息、違約金合わせて約10億5000万円の支払いを求める訴訟を盛岡地裁一関支部に提起。結審時期は現時点では見通せないが、町のトップには今後、融資判断の根拠や数次にわたる融資の妥当性、町の結果責任など一連の問題を総括して町民に説明を果たしていく姿勢が求められる。
 同町ではこのほか、毎年約100人ペースで続く人口減少、農業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など、従来からの課題が山積したまま。新型コロナウイルス感染症の拡大防止や医療体制強化、苦境にある事業者への支援などの対策も求められている。
 こうした中、神田氏の後援会(泉金一会長)内からは、「前町長から引き継いだ課題もある。ぜひ再選を実現してほしい」と、続投を期待する声が上がる。
 次期町長選について、神田氏は昨年の町議会12月定例会一般質問で「新型ウイルスへの対応など優先事項に傾注しながら判断していきたい」と答えるにとどめていたが、このほど東海新報社の取材に対して「『やるべきだ』という声を多くいただいているので、前向きに検討していきたい」と再選への意欲を示した。
 これに対し、現時点で新人、対抗馬を擁立する動きはない。町民や一部議員からは「木工団地という大きな問題が解決していない。この状況で新人は名乗りを上げづらいのでは」との声も聞かれる。前回選に出馬した水野氏も早い段階で不出馬を明言しており、町内では無競争の観測が広がり始めている。
 2月1日現在の同町の有権者数(18歳以上)は4630人(男2262人、女2368人)。前回選の投票日と比べて402人少ない。