10年越し 新店舗で再出発へ、大船渡町の新沼モータース、完成間近 3月営業開始

▲ 完成間近の新店舗前で再出発へ意気込む新沼店主

 大船渡市大船渡町字新田で自動車、バイクの整備を手がける新沼モータース(新沼光正店主)は、東日本大震災で津波を受けた店舗を修復して営業を続けてきたが、昨年末から解体、新築工事を進め、完成間近となっている。震災からちょうど10年となる3月にも営業を開始する予定だ。周辺の道路のかさ上げ工事を待ったため、時間はかかったが、安全確保を優先して再出発を期す。

 

 待望の新店舗は木造2階建て、延べ床面積は約50平方㍍。グループ補助金を活用した。
 周辺の地ノ森、新田地区では震災後、地盤沈下が発生し、道路が大雨時にたびたび冠水に見舞われてきたため、ここ数年、内水排水対策の一環でかさ上げ工事が行われてきた。
 新沼店主(53)は「店の中に水が入ってきたこともあったので、低いままではだめだ」と、かさ上げ工事のめどが立ったのを確認してから建て替えに踏み切った。
 10年前の震災当日は、小学生と保育園児だった子ども3人を車で迎えに行っている最中に店舗兼自宅を津波が襲った。がれきが流れ込み、展示していたバイクや部品、工具は流失。避難所や仮設住宅での生活を経て、数年前からは大船渡町内の妻・美佐江さん(53)の実家で家族と共に暮らしている。
 苦難の中でも「(お客さんの)依頼に応えていきたい」と震災翌日にはがれきの片付けを始め、2カ月後に営業を再開。多くの工具は自前でそろえ直したが、貴重な支援も受けた。美佐江さんの知人が閉店した盛岡市の自転車店からコンプレッサーや、タイヤなどの部品を届けてくれ、「一番ありがたかった。今も大切に使っている」と感謝する。
 店は約40年前に父・勝藏さんが創業。新沼店主は仙台市で同業の仕事を経験し、二十数年前に地元に戻り、家業を継いだ。勝藏さんも一昨年に亡くなるまで、店の再建を楽しみに待っていたという。
 旧店舗は何とか津波に耐えたが、鉄骨がさびるなど、老朽化が進んでいた。中学時代の同級生らがベニヤ板で修復作業を手伝ってくれ、営業を再開。新築工事の間も隣に仮の工場を設けて営業してきた。
 一定規模以上の作業場と設備を有し、車の分解整備などができる「認証工場」の認可を得ることを震災前から目指しており、新店舗ができれば条件が整う見込みだ。
 震災当時、小学生だった長女・句瑠未さん(21)は昨春、保育士として就職。新沼店主は「子どもたちの成長が楽しみ、支えになってきた。よく続けてこられた」と10年の歳月を振り返る。
 「今までは1人で営業してきたので、外に出る時にはその都度店を閉めなければならなかったが、設備が戻り、事務所もできるので、留守番を頼んで店を開け続けることができるようになる。より良いサービスを提供し、お客さんを増やしていきたい」と意気込む。