奇習の雰囲気感じて オンライン で「水しぎ」 住田と東京などつなぐ(別写真あり)

▲ オンラインで開催された奇習「水しぎ」

 住田町の一般社団法人・SUMICA(村上健也代表理事)は14日、「住田つながり創出(コネクリエーション)プロジェクト」の一環として同町の住民交流拠点施設・まち家世田米駅で「オンライン水しぎ」を開催した。新型コロナウイルスの影響により、世田米に伝わる火伏せの奇習「水しぎ」が中止となったことを受けて開催。住田と東京都などをオンラインでつなぎ、参加者が地域に伝わる伝統行事の雰囲気を画面越しに感じた。
 同町は本年度、町内と都市部に居住する若者世代の交流を通じた将来的な地域のにぎわい創出などを目的として、同プロジェクトを開始。町内、町外の人材を掘り起こしてネットワークの構築を図っており、同法人が事業委託を受けている。
 水しぎは、世田米が宿場町として栄えていた約200年前から伝わるとされる。偶然ボヤを見つけた通りすがりの物乞いが鍋釜をたたいて知らせ、大火を免れたのが由来で、「水注ぎ」「水祝儀」がなまったものという。
 現在は消防関係者が活動を継承。ボロ着の衣装をまとい、顔に炭を塗るなど道化の格好をして跳ね踊りながら家々を回って防火を訴えている。
 今年は新型ウイルスの影響で中止となったが、同法人では多くの人に水しぎの雰囲気を感じてもらおうとオンラインで開催。一般社団法人邑サポート(奈良朋彦代表理事)、毎年1月24日に水しぎを挙行してきた世田米の愛宕青年団「一の会」(多田英明会長)、狩猟免許を持つ女性住民で構成する「チームいただきます」が協力した。
 この日は住田と東京などをオンライン会議システム「Zoom」でつなぎ、約10人が参加。はじめに、住田や水しぎについての説明が行われ、その後は奈良さんが紙芝居で水しぎの成り立ちを紹介した。
 続いて、多田会長(54)が「水しぎメーク」を実演して生配信。スキンケアクリームを顔に塗って拭き取ることで皮脂を落とし、ドーランや粉を塗り込んだ。その後はペイントを施してカツラをかぶってメークを完成させた。
 「チームいただきます」や地元・住田高校の生徒による「水しぎファッションショー」も実施。それぞれが趣向を凝らしたメークで登場し、〝視聴者〟を沸かせた。
 ファッションショー後はフリートークに移り、参加者が水しぎへの思いを語ったり、関係者に質問を投げかけるなどしながら、「来年こそは開催を」と新型ウイルスの早期収束へと願いを込めた。
 参加した住田高校の井上遼汰君(2年)は、顔に〝宇宙〟を表現したメークを施した。「高校に水しぎが訪問して来た時に初めて見て、やりたいと思っていた。楽しかった」と笑顔。
 多田会長は「こうした形での水しぎは初めてだったが、高校生や若い人たちも参加してくれて、新しい試みの中で発見があっていい機会になった。来年はコロナが落ち着いて、またいつも通りの形で開催できるようになれば」と話していた。