地域貢献の継続使う 第46回東海社会文化賞顕彰式 大船渡市の近江一史さんと住田町の老人クラブ「愛宕喜楽会」(別写真あり)
令和3年2月16日付 1面
1個人1団体が受賞
地域社会の各分野で地道な活動を続ける団体や個人をたたえる第46回東海社会文化賞顕彰式(東海社会文化事業基金主催)は15日、大船渡市大船渡町の東海新報社で開かれた。今回は新酒の完成を知らせるスギの葉を束ねた「酒林」を40年近く作り続ける近江一史さん(87)=大船渡市日頃市町=と、住田町世田米の気仙川に架かる昭和橋の草取り活動を長年にわたって行っている地元老人クラブ・愛宕喜楽会(菊池俊夫会長、会員126人)が受賞。受賞者はそれぞれ地域貢献への決意を新たにし、活動の継続を誓った。
新型コロナウイルス対策として、規模を縮小して開かれた式には、近江さんと推薦者の山下哲夫さん(74)=日頃市町、鈴木正利さん(74)=同、愛宕喜楽会からは菊池会長(83)と菅野義保副会長(80)、佐々木義郎事務局長(82)が出席。
冒頭、同基金の鈴木英里代表が両団体の活動を紹介したうえ、「皆さんに共通しておられるのは、地域の伝統、文化、景観を守っていること。そうしたものは自然に放っておいて守られるものではなく、皆さまのひとかたならぬ努力があってこそ。そうした活動が健やかに続いていくことを願います」とあいさつし、顕彰状などを手渡した。
近江さんは「栄えある賞をいただくことは身に余る光栄。この賞に報いるため、決意を新たに精進していきたい」と謝辞。
菊池会長は、昭和橋への思いを語ったうえで、「昭和橋は今年で解体となる見込みだが、今後も新しい橋に愛情を持って、後輩たちにも活動を引き継いでいきたい」と述べた。
近江さんは、新酒ができたことを知らせるために店頭に飾られ、造り酒屋の〝看板〟となる「酒林」を作り続けている。スギの葉を直径60~70㌢の球状に束ねたもので、毎年、陸前高田市の酔仙酒造㈱(金野連社長)や酒と和雑貨の店「いわ井」(磐井正篤店主)に寄贈。同店や酔仙酒造大船渡蔵(大船渡市猪川町)の店先に飾られ、葉の色が緑から徐々に茶褐色に変わっていくにつれて、酒の熟度も増していく指標になっているという。
同社のボイラー技士だった近江さんは、在職していた昭和60年ごろから酒林作りに取り組み、平成6年の退職後も毎年同社に贈り続けている。
一方、愛宕喜楽会は、地域住民の生活を支え続ける昭和橋を30年以上にわたって草取り活動を続けている。
昭和20年代に「上町老人クラブ」として設立されて以来、さまざまな地域奉仕活動を展開。草取り活動は5代目会長の故・大和泉良夫氏の代から始まったとされ、少なくとも30年以上前から行われている。
気仙川に架かる昭和橋は建設後80年以上が経過しており、県の治水対策の一環として架け替えが計画されている。現橋での活動は昨年で最後となる可能性もあるが、新たな橋の完成後も奉仕活動は続けていくという。
東海社会文化賞は、東海新報社創立15周年を記念して昭和48年に創設し、気仙で名利を求めず社会に貢献した陰徳の個人・団体を顕彰するもの。東日本大震災後の平成24、25年は受賞者選考を見合わせたが、26年に再開した。
受賞者数は今回分を含め、通算72個人51団体となった。