東日本大震災10年/気仙の仮設住宅 3月末までに解消へ 最後の団地で退去進む 滝の里(陸前高田)の9世帯23人
令和3年2月21日付 1面

東日本大震災の発生から3月11日で丸10年。気仙3市町で唯一、今も被災者が暮らしている陸前高田市の応急仮設住宅・滝の里仮設団地では、期限となっている本年度末を前に退去が進む。1月末現在、9世帯23人(みなし仮設を除く)が入居しているが、期間中に退去が完了する見通し。津波で自宅を失った被災者のため、気仙3市町では4072戸が整備され、合わせて最大1万人超が暮らした仮設住宅は、間もなくその役目を終える。
「住む場所があるのはありがたいこと。津波で全部流されてしまったんだから」。
陸前高田市内の仮設の集約先となった竹駒町の滝の里仮設団地に、単身で暮らす村上勝也さん(78)はそう話す。この10年で同団地を含む市内3カ所の仮設を転々としてきた。
高田町にあった自宅は津波で全壊し、市内の親戚宅や一関市の旅館などで避難生活を送ったあと、平成23年7月、矢作町の旧矢作中校庭にできた仮設団地で生活を始めた。
団地そばに住む知り合い宅で食事を振る舞ってもらったり、地元内外のボランティアの支援に励まされる日々。週末団地そばで行うグラウンド・ゴルフも楽しみの一つだった。「みんなに助けられ、支えてもらった」としみじみ語る。
市による土地区画整理事業で造成された高田地区かさ上げ地の宅地は、一昨年秋に引き渡しを受けた。「慣れ親しんだ場所に戻りたい」とずっと住宅再建を目指してきたが、さまざまな事情で結局断念。最近、空き室の入居募集をしていた高田町の災害公営住宅・下和野団地に引っ越すことを決めた。
昨年9月に胃がんが見つかり、12月に胃の切除手術を受けた。「昨年末は大変だったけど、今は体調も回復してきた」。今月中の転居を目指し、荷物運びに汗を流している。
来月で震災10年。かつて自宅があった土地に再建された家は少なく、寂しさを感じるが、「工事作業員は全国から集まり、陸前高田の復旧・復興のために一生懸命働いてくれた。がれき撤去から始まったまちづくり。当然時間はかかる。その間に高台に家を建てる人が増えるのは自然な流れ」とうなずく。
長かった仮設暮らしを経て、間もなく始まる恒久住宅での生活。「体調が良ければまた行きたいね」。趣味のアユ釣りのシーズン到来を心待ちにしている。
県は、県内11市町村に315団地、1万3851戸の応急仮設住宅を整備。このほか、遠野市と住田町が独自に4団地133戸を建設した。
気仙の整備数は、大船渡市が39団地1811戸、陸前高田市が53団地2168戸、住田町が3団地93戸。大船渡市は、令和元年度内に全入居者の退去と仮設住宅の解体を完了。住田町は昨年7月、入居者全員の退去を終えた。
陸前高田市は、52団地2082戸が解体済み。残る滝の里仮設団地は県内で唯一、現在も被災者が生活しており、86戸のうち被災者9世帯23人のほか、同市への派遣職員30世帯36人が暮らしている。