小山さん(大船渡地区消防本部)が最優秀賞 県消防職員意見発表会 「救助死」防ぐ取り組み提案

▲ 最優秀賞に輝いた小山消防副士長

 県消防長会(石井健治会長)が主催する「第44回県消防職員意見発表会」はこのほど、盛岡市で開かれ、大船渡地区消防組合消防本部の大船渡消防署綾里分遣所に勤務する小山佳祐消防副士長(25)が最優秀賞に輝いた。水難事故にかかる「救助死」を防ぐ取り組みについての発表が高く評価されたもので、4月27日(火)に青森県青森市で開かれる東北大会に出場する。

 

4月に東北大会へ出場

 

 発表会は、県内の各消防本部から選抜された消防職員が業務に対する提言や取り組むべき課題等について自由に発表し、消防業務の諸問題に関する一層の知識の研さんや意識の高揚を図ることを目的に毎年開催している。
 小山消防副士長は、同消防本部内での書類選考をクリアし、大船渡地区消防組合消防本部の代表として出場。「『救助死』のない社会を目指して」と題して発表した。
 同消防組合の水難救助隊に所属し、一般社団法人・水難学会のプール指導員も務める小山消防副士長は、全国で発生している水難事故において、犠牲者の約9割が大人であることを紹介。
 中でも、溺れた子どもを助けに行った大人が命を落とす「救助死」が後を絶たないという事実を伝えるとともに、現代の小学校教育では、水難事故に遭った時に、慌てず水に浮いて、呼吸を確保しながら救助を待つ技術を学ぶ「ういてまて教室(着衣泳)」が全国の約8割の学校で実施されていることや、その結果、水難事故発生後の子どもの生還率が9割にのぼり、「浮いて待つ」意識が子どもたちに定着していることを説明した。
 続けて、この現状を招いているのは、水難事故に関する講習のほとんどが子どもたちを対象としたもので、大人たちの学習機会がないことが原因であると言及し、水難救助業務にあたる消防士としての知見を生かした「救助死ゼロ運動」の展開を提案。小学校の多くは水難事故が多発する夏休み前に着衣泳の授業を実施していることに着目し、子どもたちだけでなく、授業参観などを活用して親子で学ぶ機会を設け、水辺で事故に遭うリスクや予防策、早期救出のための通報要領、助けに行くことの危険性などについて知ってもらうことで、「親は子どもが自ら浮いて待てることを確認でき、〝盲目的〟に助けに行くのではなく、子どもを守るための最善の行動がとれるようになる」とした。
 結びには、「大人には、子どもたちの未来を守る責任があるが、その責任を果たすために命を犠牲にすることがあってはならない。救命の連鎖をつないだ先に、『救助死』のない社会があると信じている」と述べ、悲しい事故を一つでも防ぎたいという思いを言葉に込め、発表を締めくくった。
 小山消防副士長は「最優秀賞をいただくことができ、ただただ驚いている」と喜びを語り、「先輩方や家族の協力があっていただくことができた賞。大船渡地区消防本部の名に恥じないように、自信を持って東北大会に臨みたい」と誓っていた。