交流人口拡大に意欲、戸羽市長が施政方針演述、市議会定例会開会

▲ 施政方針演述を行う戸羽市長

 陸前高田市議会定例会は25日、開会した。会期を3月19日(金)までの23日間と決めたあと、戸羽太市長が施政方針演述を行った。市長は東日本大震災後の復旧・復興事業の進ちょくを振り返りつつ、新型コロナウイルス感染症の収束後を見据えた交流人口、関係人口の創出・拡大などに強い意欲を示し、「誰もが将来に希望を抱けるような取り組みにもチャレンジし、市民と支え合い、歩んでいく」と所信を表明した。建設中の新市庁舎は5月上旬に業務を開始する予定で、仮庁舎での市議会定例会は今回が最後となる。

 戸羽市長は冒頭、震災犠牲者、行方不明者の帰りを待つ家族に思いを寄せ、国内外からの継続的な支援に謝意を述べたうえ、「令和2年度は創造的な復興、ビルド・バック・ベターの考え方のもと一日も早い復旧・復興を目指してきた。にぎわいが戻ってきたと感じている」と振り返った。
 また、新型ウイルスが同市にも甚大な影響をもたらしていることから、「基本的な感染症対策や独自施策を実施してきた。今後も市民ニーズを的確に把握し、スピード感と緊張感をもって適時適切な対応に努める」と展望を語った。
 市政運営については、市の課題や現状の分かりやすい説明、市民からの意見・要望を聞く機会を増やす意欲を示し、▽「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成と持続可能な地域づくりに向けた取り組みの推進▽新型ウイルスの収束後を見据えたにぎわいの創出と交流人口、関係人口の創出・拡大▽地域循環型経済の推進と6次産業化による地場産品の高付加価値化、移住・定住や起業家支援など産業振興と雇用創出──の三つの視点を掲げた。
 新年度予算案については「事業の必要性や効果を検証しながら、まちづくり総合計画実施計画に基づく各種事業に取り組む。国の『復興・創生期間』終了後を見据え、心のケアやコミュニティー形成支援なども引き続き実施し、持続可能で活力あるまちづくりを推進する」と概要を伝えた。
 そのうえで、まちづくり総合計画に掲げる八つの基本目標ごとの主要施策を説明。
 このうち、「復興の確実な推進と誰もが安心して暮らすまちづくり」では、円滑な避難行動を確保する道路網の整備をあわせた多重防災型の災害に強い安全なまちづくりに力を入れ、高田米崎間道路など復旧・復興事業の一日も早い完遂を目指す。住宅再建道路工事支援事業を継続し、被災者の生活再建を支援する。
 防災集団移転促進事業に関しては、引き続き、移転者に対し土地の購入などの助成を行う。住宅団地の空き区画の解消に向け、被災の有無を問わず一般分譲を推進し、取得した移転元地は、土地の有効活用を図る。高田地区、今泉地区の土地区画整理事業は、宅地の引き渡しがすべて完了し、換地処分を進めるとともに、土地の利活用を促進していく。
 「活気に満ちあふれ豊かに暮らすまちづくり」では、ピーカンナッツ・プロジェクトの具現化に向け、4月から本格稼働する苗木育成研究施設を活用し、市の気候にあった品種の選定や栽培技術の確立を図る。
 林業分野に関しては、担い手対策として、自伐型林業の従事者を引き続き支援し、事業モデルの構築とその普及を図る。再生可能エネルギーの木質バイオマスなどでの間伐材利活用も検討していく。
 水産業の柱である養殖漁業に関しては、貝毒などの検査費用の支援や、特定養殖共済の加入促進を行う。同市の特産「広田湾産イシカゲ貝」は、販売促進や生産体制の強化を図る支援を継続する。
 本年度まで3年間取り組んできた広田湾の環境調査は3年度から、新たに県、岩手大学、広田湾漁協、高田高の協力を得ながら行う。持続可能な漁業の推進に向け、資源管理型漁業の展開を図るほか、自然環境の影響を受けにくい陸上養殖を推進する。
 商工業分野では、新型ウイルスによる市内経済への影響を把握し、市内事業者の事業継続に資する支援策を実施していく。土地区画整理事業で整備した土地の利活用促進は、商業者やまちづくり会社と協力しながらマッチングに取り組み、市の気候や環境、まちづくりに合った企業誘致を進める。
 また、中心市街地や観光施設などの回遊を目的とした事業も展開していく。復興需要の収束やコロナ禍による地域消費力の低下を踏まえ、地域経済循環の調査結果を有効活用しながら地産地消を戦略的に進め、地域経済の持続可能性を高めていく。
 最後に、「今年は、東京五輪・パラリンピック関連事業が計画されているほか、夏には市民待望の高田松原海水浴場の海開きを行う。地域経済に弾みをつける大変重要な機会。安心して自分らしく暮らせるまち『夢と希望と愛に満ち 次世代につなげる 共生と交流のまち陸前高田』の実現に向け、市民とともに歩んでいく」と締めた。
 続いて、大久保裕明教育長が所信を表明。教育大綱の基本理念である「郷土で学び夢を拓く、心豊かでたくましい人づくり」を踏まえ、「コミュニティスクールの推進による学校・家庭・地域の連携、協働による地域と一体となった特色ある学校づくりなどの教育施策を展開する」と述べた。
 市当局は、3年度各種会計予算や2年度各種会計補正予算など議案38件を提出。25日は人事案件、市道路線の廃止・認定、「陸前高田市及び大船渡市営林組合」の解散・財産処分、工事変更請負契約など議案8件をいずれも原案通り同意、可決した。
 工事の変更請負契約締結は3件。うち新市庁舎新築工事の契約変更は、作業員確保のための宿泊費増、電波障害範囲拡大に伴う対策工事の増などのためで、契約金額を42億603万円から43億1721万円に変更する。
 人事案件は、人権擁護委員1人の任期満了に伴うもの。再任候補者として佐々木善仁氏の推薦を認めた。
 残る議案30件は、議長を除く全議員で構成する予算等特別委員会に審査を付託。請願「安全・安心の医療・介護の実現と国民の命と健康を守るための請願について」は、教育民生常任委に審査を付託した。
 今後の日程次の通り。
 ▽26〜3月1日=休会▽2〜4日=一般質問▽5日=一般質問、予算等特別委員会▽6、7日=休会▽8日=予算等特別委員会▽9日=本会議、予算等特別委員会▽10日=予算等特別委員会▽11日=休会▽12日=予算等特別委員会▽13、14日=休会▽15日=復興対策特別委員会▽16日=休会▽17日=予算等特別委員会、広聴広報特別委員会▽18日=休会▽19日=本会議