東日本大震災10年/われらの古里ここにあり かさ上げ地に慰霊碑建立 気仙町今泉の鉄砲町と仲町(別写真あり)

▲ 旧鉄砲町町内会の犠牲者を悼んで龍泉寺境内に建立された慰霊碑

 東日本大震災の発生を受けて解散した陸前高田市気仙町今泉地区の2町内会が、震災から10年の節目を前に、かさ上げ地に慰霊碑を建立した。2月28日には、それぞれの碑のもとに元住民たちが集まって開眼供養や完成式を実施。家族や町内会の仲間を悼むとともに、碑をよりどころとして地域の歩みと教訓を伝承していくことを誓い合った。

 

町内会の仲間悼む/鉄砲町

 

 旧鉄砲町町内会は龍泉寺(江刺秀一住職)の境内に、高さ約1㍍80㌢で白みかげ石製の「東日本大震災慰霊碑」を建立。両隣には町内会で犠牲になった34人の芳名碑と、建立のいきさつを刻んだ碑も置いた。
 鉄砲町には132戸あったが、震災の津波ですべて流失。住民は市内外に散り散りとなって暮らし、平成27年には町内会を解散。これを決議した総会席上、残った町内会費や寄付金などを慰霊碑建立に充てることとしていた。
 同日は現地で開眼供養が開かれた。旧町内会の全戸に声掛けする予定だったが、新型コロナウイルスの影響で犠牲者の遺族と元役員に参列を限った。集まった約30人は、江刺住職の読経のもとで碑に白菊を手向け、静かに手を合わせた。
 現在は近くの高台で暮らす元町内会長の菅野義一さん(75)は、「碑を見るたび、町内会の仲間たちやけんか七夕など行事のことを思い出す。亡くなられた皆さんもよりどころができたと安堵(あんど)しているのではないか」としみじみ語り、「きょうの参列がかなわなかった方々にも、手を合わせていただければと思う」と話していた。

 

犠牲者の心に寄り添って/仲町

 

鎮魂の碑完成式で旧仲町の犠牲者らの冥福を祈る参加者ら

 旧仲町地区では、震災津波で流された仲町公民館跡地付近のかさ上げ地に、高さ1㍍50㌢ほどの慰霊碑「鎮魂の碑」を建立。碑には犠牲者24人の名前が刻まれた。
 約30世帯あった仲町地区は、震災の大津波で壊滅的被害を受けた。当時避難所となっていた同公民館では、集まっていた住民らが波にのまれ、犠牲となった。
 震災後は、旧仲町町内会のメンバーでつくる「なかまち『絆』の会」(岩渕達夫会長)が震災命日に追悼行事を毎年実施。「震災から10年を前に、犠牲となった方々の冥福を祈る場所を」と昨年、慰霊碑の建立準備委員会(村上馨会長)を立ち上げ、遺族らからの協力金もあって建立に至った。
 完成式には、各地に散り散りとなっている仲町の元住民や遺族ら約50人が参加。慰霊碑の前で法要が行われ、参加者らが花を手向けるとともに、手を合わせて鎮魂の思いをささげた。
 遺族代表のあいさつで、母・ヤス子さんがいまも行方不明となっている米谷春夫さん(73)は「おふくろは今までお墓にも仏壇にもいなかったが、ここに来ると、おふくろだけでなくほかのみんなもいるような気がする」と表情を和らげた。
 岩渕会長は「生かされた者の使命と思い、建てた鎮魂の碑。犠牲者のみなさんが安らかに眠れるよう祈りつつ、これからも心に寄り添いたい」と話していた。