東日本大震災10年/市営の全16漁港 復旧・復興事業が完了 事業費総額227億円 岸壁や防潮堤、かさ上げなど

▲ 4日でかさ上げ工事が完了した蛸ノ浦漁港。岸壁の漁港施設整備や、海面高7・5㍍の防潮堤整備も行われた

 大船渡市は4日付で、「市管理漁港施設等の復旧・復興事業完了宣言」を発表した。東日本大震災では市営16漁港すべてが壊滅的な被害を受け、一日も早い漁業活動の再開に向けて事業を展開。最後となっていた赤崎町・蛸ノ浦漁港のかさ上げ工事が同日、検査完了となり、工事業者から引き渡しを受けた。市は今後、各施設の維持・管理に加え、防災機能の円滑な運営などを進める。

 

最後の蛸ノ浦も引き渡し

 

 市が管理しているのは、三陸町のうち吉浜地区では千歳、扇洞、吉浜、増舘の4漁港、越喜来地区は小壁、泊、鬼沢の3漁港、綾里地区は小石浜、砂子浜、野野前、小路の4漁港。赤崎地区は合足、長崎、蛸ノ浦の3漁港で、末崎地区は碁石と泊里の2漁港。
 このほかに県管理の根白(吉浜)と崎浜(越喜来)、越喜来、綾里、大船渡、門之浜(末崎)の6漁港がある。市、県管理を合わせると22漁港で、県内市町村の中では最多となる。
 市は漁業活動の早期再開を目指し、がれき撤去や応急的な復旧を経て、災害査定に入り、平成23年度から24年度にかけて測量作業や工事に着手。漁業関係者や地域住民らの理解を得ながら、大規模な復旧・復興事業を展開してきた。
 漁港施設と海岸保全施設は災害復旧事業で、地盤沈下した分のかさ上げ工事は復興交付金事業で進めた。ピーク時には年間40億円を超えるペースで施工し、総額では227億円に達した。
 漁港施設のうち、防波堤は15漁港で総距離3・98㌔、岸壁は16漁港で同3・66㌔の整備を進めた。海岸保全施設の防潮堤は8漁港で整備し、総距離は3・08㌔となっている。漁港施設は一昨年8月までに、海岸保全施設は今年2月にすべて完了した。
 両施設背後地のかさ上げ工事は全16漁港で行い、総面積は11・84㌶。最後の工事となった蛸ノ浦漁港内も、検査完了を迎えた。舗装も施したかさ上げ整備により、フォークリフトでの運搬がスムーズになるなど、作業用地としての利便性が高まった。
 この間、土木工事の作業員や資材不足、現場周辺で行われる各種公共事業との調整などにより、当初予定よりも遅れが生じたが、発災10年を前に完成を迎えた。一部の漁港では、震災直後からの地盤沈下だけでなく、年々進む地盤隆起にも対応した。
 防潮堤の高さは基本的に、県の考え方に沿い「頻度の高い津波(数十年~百数十年)」の津波に対応。市営漁港で最も高いのは泊里で、海面高12・8㍍。一方、同じ末崎町の碁石では、地域要望や景観を尊重する考えなどを生かし、8・0㍍としている。
 また、自動閉鎖型の陸こうや、車両で漁港内に出入りする際は防潮堤上部からの「乗り越し」とする形状など、震災前にはなかった機能も目立つ。
 市水産課の今野勝則課長は「市工事分が完了し、一つの区切りを迎えた。今後は維持・管理にシフトしていくが、きちんと防災機能が運用できるよう努めたい」と話している。
 県営漁港分のうち、綾里と大船渡では、令和3年度も工事を展開。綾里では港地区・綾里川水門の両側に構築する防潮堤の一部と市道付け替え部分などが残り、大船渡では永沢地区での防潮堤整備や細浦地区の水門整備が進められる。