復興への歩みを重ねて… あす東日本大震災発生10年
令和3年3月10日付 1面
戦後最悪の自然災害となった東日本大震災は、あすで発生から10年となる。多くの尊い命を津波で奪われた気仙両市は、深い悲しみの中で復興への歩みを重ね、節目の日を迎える。両市ではこの間、最大の懸案だった住まいの再建や、新しいまちの土台となるインフラ整備がほぼ完了。中心市街地の再生も進み、目に見える形での復興は着実に進展したが、被災者の心の復興は途上にあり、人口減少や高齢化など震災前からの課題も残ったままだ。新型コロナウイルスという新たな災禍が市民の生活や経済に大きな影響を及ぼしている中、未来につながる真の復興への取り組みに総力の結集が求められる。
平成23年3月11日午後2時46分に発生した、国内観測史上最大となるマグニチュード9・0の巨大地震により、気仙では大船渡市と陸前高田市で震度6弱、住田町で同5強を観測。両市はその後、10㍍を超す大津波に襲われ、壊滅的な被害を受けた。
県総合防災室のまとめによると、2月末現在の死者は大船渡市340人、陸前高田市1557人。大船渡市では79人、陸前高田市では202人の行方が今も分かっておらず、大船渡警察署による捜索活動が今も続く。
震災による負傷や持病の悪化などで亡くなった人(関連死)は大船渡市で83人、陸前高田市で49人。避難生活が長期化した影響が色濃く、被災者の心身のケアに今後も手厚い支援が必要だ。
津波による全半壊家屋は大船渡市で3938棟、陸前高田市で4047棟。家を失った被災者らのための応急仮設住宅は大船渡市に39団地1811戸、陸前高田市に53団地2168戸、住田町に3団地93戸が整備された。
高台などへの住まいの再建が進展するのに伴い、大船渡市は令和元年度内、住田町は昨年7月、応急仮設住宅入居者全員の退去が完了。陸前高田市では2月末時点で、滝の里仮設団地に被災者7世帯19人が暮らしているが、今月中に全員転居する見通しで、応急仮設住宅での避難生活は発災から10年余にしてようやく解消される。
この間、気仙両市では災害公営住宅の建設、防災集団移転促進事業による宅地造成が相次いで完了。陸前高田市の高田・今泉両地区で進められていた土地区画整理事業による宅地造成、引き渡しも今年1月までに終わっており、被災地復興の最大の懸案だった恒久的な住まいの再建にかかる事業は、発災から10年を前にほぼ達成された。
一方、かさ上げされた両市の中心部では、発災6年目から商業集積の動きが本格化。新しいまちの顔は中心市街地の再生によって輪郭を表し、にぎわい復活を目指す官民の取り組みが活発化している。
国が定めた「復興・創生期間」は、今月末で終了する。被災した産業、都市基盤など、気仙両市の復興計画に登載されたインフラ整備事業は総仕上げの段階まで進み、遅れがみられる一部の事業についても、ほとんどが今年中には完了する見通し。国が震災復興のリーディングプロジェクトとして事業費を集中投入した三陸沿岸道路(仙台市~八戸市、全長359㌔)も、今月6日に仙台市から田野畑村までが一本でつながり、今年中に全線開通を迎える。
「復興・創生期間」が終了するのを受け、国は令和3年度から7年度までの5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけ、被災者の心のケアやコミュニティーの形成など、ソフト面の対策に重点的に取り組む。地域の持続的発展や地方創生の実現など真の復興に向け、被災地は新たなスタートラインに立つ。
気仙両市は今、震災教訓の継承や被災者の心の復興、震災前から続く少子高齢化、人口減少、復興需要の収束による地域経済の活力低下、新型コロナウイルスへの対応など、さまざまな課題に直面する。発災から10年という節目を迎えるにあたり、これら課題の克服に官民が総力を結集して取り組み、「震災前よりいいまち」と「希望ある未来」を次世代に残していく決意を新たにしたい。
あす、気仙各地で追悼式
東日本大震災発生から10年を迎える11日、気仙では犠牲者を追悼する式典が各地で行われる。いずれも新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じ、来場者にマスク着用、手指消毒などの対応を求めている。
陸前高田市と県は、午後2時30分から高田町の市民文化会館「奇跡の一本松ホール」で合同追悼式を開く。対象は震災遺族らで、個別の案内は行わない。参列は平服でもよい。
遺族らによる献花は午前10時から午後6時まで。遺族の献花用の花は用意するが、遺族以外は持参するよう呼びかけている。同日は、参列者の分散を図るため、高田松原津波復興祈念公園で県、市の来賓を対象とする追悼式も開催する。
大船渡市主催の追悼式は、午後2時30分から盛町のリアスホールで開かれる。式典参加は関係者約40人に限定。式典終了後の午後4時~7時に一般の献花・記帳を受け付ける。献花用の花は、市で準備する。
住田町では町主催の追悼行事は行われないが、世田米のまち家世田米駅の屋外スペースで一般社団法人・邑サポートと同・SUMICAによる「はなよせの会」が午後2時~3時30分と、5時30分~6時30分に行われる。






