4月から周遊エリア拡大 高田松原津波復興祈念公園 砂浜も合わせて一般開放

▲ 高田松原津波復興祈念公園内の整備が進み、4月からは奇跡の一本松前にかかる「しおさい橋」などの利用が可能に

 県は、陸前高田市内で進めている高田松原津波復興祈念公園で工事を完了したエリアと、高田海岸(砂浜)を4月1日(木)午後2時から一般に開放する。公園は一部を除く防潮堤沿い、道の駅側から奇跡の一本松に向かう園路、しおさい橋などが利用可能となり、周遊エリアが拡大。東日本大震災の津波で失われ、再生事業が行われた砂浜も自由に立ち入りできるようになる。同月下旬には震災遺構のタピック45周辺部も供用開始を予定しており、公園と砂浜が人々に震災の記憶を伝え、観光振興や交流人口の拡大なども図られると期待される。

 

 震災前、約7万本の松林が並び、陸前高田を代表する観光地としてにぎわいをみせていた高田松原。約2㌔にわたって広がっていた砂浜は、震災による地盤沈下と津波で9割が消失し、松林も「奇跡の一本松」を残してほとんどが流された。
 高田松原津波復興祈念公園は、震災の犠牲者を追悼・鎮魂し、震災の事実や教訓を継承するとともに、まちづくりと一体になった地域のにぎわいを再生しようと、高田松原地区に国営の追悼・祈念施設をはじめ、東日本大震災津波伝承館、道の駅「高田松原」、高田松原運動公園などを整備するもの。
 また、津波で被災し、エリア内に位置する下宿定住促進住宅、タピック45、奇跡の一本松、陸前高田ユースホステル、旧気仙中学校は震災遺構として保存する。令和元年9月には、国営追悼・祈念施設の一部、震災津波伝承館、道の駅がオープンした。
 このうち、県は震災遺構、園路、広場などの整備を担っており、事業面積は約40㌶。平成27年度に事業化され、29年度に造成工事、30年度に園路・広場や植栽の整備工事に着手し、取り組みを進めている。
 今回供用を開始するのは、「海を望む場」から古川沼側に位置する防潮堤沿いや、道の駅側からしおさい橋を通って奇跡の一本松に至る園路、ユースホステルの周辺など。
 これまで、奇跡の一本松に向かうには、「祈りの軸」から海を望む場付近まで移動し、気仙町側の園路を進むルートのみだった。1日の供用開始後は、道の駅脇の園路からしおさい橋を渡って向かうルートが利用可能となる。
 ユースホステルや古川沼も新たな園路を利用して海側から望めるようになり、公園内の周遊エリアが広がる。
 タピック45の周辺部も、4月下旬には供用開始の見込み。旧気仙中学校とともに内部を公開する震災遺構となるが、中を見学するにはパークガイドの案内が必要。タピックと気仙中の内部公開は、5月上旬から予定されている。
 高田松原の砂浜延長1㌔は、県が平成25年度から再生事業を進め、31年3月に完成。このうち、砂浜の幅を広めに確保した700㍍区間は海水浴場として利用でき、今夏の海開きを予定する。
 砂浜の完成後、県は安全情報伝達施設やトイレ・シャワー棟などの整備を進めてきた。今回完成した安全情報伝達施設は、スピーカー3基とこのうち2基に付属する電光表示板(約2・5㍍四方)で、Jアラートと連動し、砂浜の利用者らに災害時の情報を伝える。トイレ棟3カ所とシャワー棟は、7月の供用開始を見込む。
 1日は、一般開放前の午後1時から、県主催によるセレモニーを開催。関係者らが出席し、工事報告やテープカット、砂浜散策などを行う。
 復興祈念公園の整備は、下宿定住促進住宅や海水浴場の駐車場、公園管理棟の建設などが残っており、完成次第、順次供用を開始する計画。年内の工事完了を目指して進めていく。
 県大船渡土木センターは、「公園内の周遊エリアが広がることから、海岸と合わせて利用をしてもらいたい。公園や砂浜が、昔のように人の交流を生み出す場になってもらえれば」と話している。