大地焦がす芽吹きへの炎、下有住の蕨峠 里山を守る会が山焼き(別写真あり)

▲ 山焼き後は、真っ黒な地面が広がった

 住田町の「すみた里山を守る会」(紺野昭二会長、会員13人)は24日、下有住字奥新切地内の蕨峠町有地で山焼きを行った。昨年は悪天候や新型コロナウイルス感染症の影響によって山焼きを見送ったため、今年は2年ぶりの実施。会員らは自生するワラビなどの芽吹きを促す火を入れ、勢いよく上る赤い炎に里山の恵みへの期待を込めた。

 

ワラビの成長に期待

 

 守る会は、伝統的な山焼き手法の取得と継承を目指し、平成20年に結成。山菜栽培にも力を入れ、遠野市境に位置する蕨峠町有地の一部で、山焼きとワラビ発生状況調査の実証を行っている。
 山焼き作業は、前の年に伸びた雑草などを焼き、新たな草花や山菜が芽吹きやすい環境を整えるもの。山焼き後の例年5月には、約2㌶の丘陵地一帯が〝ワラビの森〟と化し、守る会では一般の人に収穫してもらう観光農園事業も実施している。
 農業従事者の高齢化や減少などによる里山地域の遊休化は、農業生産の減退だけでなく、地域環境にも悪影響をおよぼす。こうした中、遊休地化した里山の再利用や環境整備、山菜栽培の振興と集団的農業経営の推進、鳥獣害対策、体験型観光も図ろうと同会による山焼きや観光農園事業が行われている。
 この日の作業には、守る会や町役場農政課の職員ら10人余りが参加。午前8時ごろから作業を開始し、携行用のガスバーナーを使ってカヤなどに次々と着火した。
 風にあおられた炎は「パチッ、パチッ」という甲高い音とともに勢いよく燃えて線状に広がった。白い煙が去った後、辺り一面は着火前とは一変した真っ黒の地面があらわになった。
 かつては各地で盛んに行われていた山焼きだが、今ではその光景もほとんど失われている。
 着火作業を行った同会の泉田晴夫さん(68)=上有住=は「こうした昭和のやり方も後世に引き継いでいければ」と話し、「今年は立派に育ってくれそうだ」と、ワラビの順調な生育に期待を込めていた。