市長らを岩手県警に刑事告発 吉浜太陽光建設に反対する会 契約巡り虚偽公文書の作成指摘

▲ 記者会見に臨んだ「反対する会」の関係者(県庁)

 大船渡市三陸町の吉浜地区で計画されている太陽光発電事業の土地賃貸借契約を巡り、住民有志で構成する「荒金山・大窪山太陽光発電所建設に反対する会」(小松錦司代表)は24日、虚偽有印公文書作成罪や同行使罪にあたるとして戸田公明市長と志田努副市長を岩手県警本部に刑事告発し、受理されたと発表した。同会では捜査当局による真相究明を求めるとともに「事業を止めるための手段の一つ」と説明している。

 

 同会関係者によると、告発を行ったのは小松代表と横石善則副代表、田中英二事務局長の3人。告発人代理人の笠原靜夫弁護士が24日、岩手県警に告発状を提出し、受理されたという。
 横石副代表と田中事務局長、笠原弁護士らは同日、盛岡市の県庁記者クラブで記者会見を行った。横石副代表は「吉浜の世帯・住民から73%の事業反対署名を集め、市長に提出した。市長は『住民合意なしには進めない』と国や市議会、吉浜住民に公約している。公約を守らず発電事業者に加担するのは、住民への背信行為」と語った。
 刑事告発の経緯説明によると、大船渡市は事業を進める自然電力㈱との間で、平成28年4月28日付で土地の賃貸借契約を締結。着工の期限を平成32年(令和2年)3月31日までと指定していたが、事業者は着工できずに年度末を迎えた。
 期限を延長するためには、期間中に変更契約が必要だったが、実際は4月に入ってから締結。日付をさかのぼる形で、手続きが行われた。一連の動きに対して、反対する会では「市長と副市長は、他数人の市職員と共謀し、変更契約を3月31日に行ったように見せかけるため、内容虚偽の公文書である稟議書を作成し、行使した」としている。
 反対する会では「事業者は7年前、1㌔㍗あたり36円と高い売電価格で計画認定を受けていた。失効して新たに契約となれば、売電価格は12円ほどに下がり、事業になりえない。市長は、あえて遡及までして、利益を得させようとした」と指摘する。
 笠原弁護士は「地方だけでなく中央省庁でも公文書の日付、中身が改ざんされるケースが多々ある。こういう風潮に対して、一石を投じる必要がある。捜査当局において、解明していただきたい。稟議書は、行政が意思決定をした事実を明らかにするもの。なぜ、このように虚偽のものをつくったのか」と話した。
 田中事務局長は「吉浜9部落のうち6部落会と水田を耕作する農家の団体が、反対決議書を市に提出した。それでも市長は『総合的判断』として、このままいくと強行される心配がある。(告発は)いろいろできることをやっていくための一つの手段」と述べた。
 契約変更を巡っては、反対する会が昨年、市議会に市有地の賃貸借契約等のあり方について調査を求める請願書を提出。これを受け、総務常任委員会の調査で市当局は、日付をさかのぼって契約したことを認めた。
 また、市側は市議会3月定例会の答弁で「3月30日に、事業所側から遅延理由書が提出された。年度末の繁忙と重なって新年度に入ってからの事務処理となってしまい、事務担当者においては契約に空白の期間を生じさせないため、起案日を3月31日付とする必要があると思い込み、日付をさかのぼって事務処理をしたもの」と答弁。民法上は違法性はないものの、契約確定日の原則など地方自治法に抵触し、不適正な事務処理だったとの認識を示している。
 戸田市長は同日、「本日午後2時から、県政記者クラブにて、吉浜地区太陽光発電事業の土地の賃貸借契約の変更に係る事務処理に関し、大船渡市長・同副市長に対する刑事告発に関する記者会見が行われたとのことであり、ただただ驚いているところであります。現時点において告発の内容は不明でありますが、捜査には全面的に協力してまいる所存であります。市民の皆様には、御心配をおかけし大変心苦しく思っております」とのコメントを出した。