31日から自動閉鎖運用へ 津波注意報・警報発令時 市営漁港9カ所の陸閘門扉(動画、別写真あり)

▲ 遠隔操作で閉鎖する流れについて現地で確認する関係者ら

 大船渡市は31日(水)から、市営漁港の9カ所に整備した陸閘(りっこう)自動閉鎖システムの運用を始める。東日本大震災時に門扉を閉鎖しようとした消防団員らが被災した教訓をふまえ、津波注意報や警報発令時に、専用の衛星回線を使用し、現地で人が操作することなく閉じる仕組み。漁港内にいる人々が高台への避難にあてる待機時間を含め、地震発生から閉鎖までの時間は19分としており、今後は運用周知などに力を入れる。

 

地震発生から19分で完了

 

 震災を受け、市は被災した市営16漁港の防潮堤や漁港施設などの復旧事業を展開。防波堤は15漁港で整え、本年度は自動閉鎖システムの運用準備を進めてきた。
 陸閘の自動閉鎖を導入するのは、赤崎町の蛸ノ浦7カ所と、三陸町綾里の小石浜、同越喜来の泊の各1カ所。運用開始に向け、25日までの3日間、各地で説明会が行われた。
 同日行われた泊での説明会には、漁協関係者や漁港利用者ら約10人が集まった。今野勝則水産課長は「かねてから整備を進め、ようやくシステムの運用体制が整った。人の手によらずに動かすものであり、実際にどう動くかや、日常的な管理体制などを確認していただきたい」とあいさつした。
 地震発生を受け、津波注意報・警報を告げるJアラートが発令されたと想定し、遠隔操作による門扉閉鎖を実施。閉鎖命令から10分間は待機時間とし、閉鎖を呼びかける音声が鳴り響いた。
 その後、4分をかけて高さ4・7㍍、幅9㍍の門扉がゆっくりと閉鎖。挟み込み防止装置も付いており、人や車両が近づくといったん停止する機能も確認した。
 地震発生から閉鎖までは19分間。同課によると、過去の津波での最短到達時間は24分という。
 泊では、閉鎖後にシステム異常が確認され、住民らが手動で門扉を開けた。参加者は門扉を操作するハンドルの場所や、今後の管理のあり方なども話し合いながら、有事への意識を高めた。
 漁港内では普段、越喜来漁協の組合員約40人がカキやホタテ、ホヤ、ワカメなどの養殖生産活動で利用。漁港内で車両が出入りできる場所は、自動閉鎖システムで動く陸閘1カ所となっている。
 説明会に立ち会った舩砥秀市組合長は「消防団員の負担を減らせるのは大きい。10分程度の待機時間があることは、漁港利用者がよく認識しておく必要がある。各漁港の防災システムをよく理解し、漁船の『沖出しルール』の取りまとめにつなげたい。津波を常に頭に入れ、被害を最小限にとどめる地域づくりを考えていくことが重要」と話していた。
 10年前の震災では、陸閘や水門などの閉鎖作業にあたった多くの消防団員らが被害にあった。こうした教訓を踏まえ、被災各県の沿岸では、現地に行かなくても閉鎖できる仕組みづくりが進む。
 市の自動閉鎖システムは市役所や消防署、県庁、大船渡地区と釜石地区の合庁で操作することができる。注意報などの解除後は、市職員らが現地確認を行ったうえで、遠隔操作などで開放する。
 確実な閉鎖に向け、統制局や衛星設備の二重化に加え、停電時でも動かせるように発電機を完備。今後も陸閘設備の点検や訓練を重ね、防災機能の維持・充実を図る。