住高生のプロジェクト実現 外国人向けごみ分別表  町が5カ所に設置

▲ 町内5カ所に設置されたごみ分別表

 住田町は、外国人向けのごみ分別表を製作し、町内5カ所のゴミステーションに設置した。住田高校の佐々木優弥君(2年)が、独自教科である「地域創造学」で取り組んできたプロジェクトを知り、実現させた。佐々木君は自らの海外研修での経験などから、「外国人も暮らしやすいまちに」と外国人向けのごみ分別表の製作を発案。「まずは第一歩。これから、気仙全体が外国人にとって住みやすい場所になれば」と今後の活動に意欲をみせている。

 佐々木君は本年度から、地域創造学において「外国籍の人たちも暮らしやすいまちをつくる」をテーマに活動を展開。外国人が日本で不便、不自由と感じていることを調べ、その解決策を探ってきた。

 

地域創造学で取り組む

 

佐々木優弥君

 活動の根底には、小学校時代のALT(外国語指導助手)との交流がある。陸前高田市高田町出身の佐々木君は、東日本大震災の津波で自宅が被災し、高田高校第2グラウンドに整備された仮設住宅に小学2年生から中学1年生まで入居していた。同じ仮設住宅に入居していたALTと交流するうちに、日本の生活で困っていること、苦労していることを教えてもらったことが、今回の活動につながった。
 一昨年、当時の大船渡高校3年生の生徒が行っていた在住外国人の生活充実を支援する取り組みにも影響を受けた。また、佐々木君は昨年度、海外派遣事業でオーストラリアを訪問した際に、自身も「外国人」としての苦労を感じたという。
 

これまでに、住田町内在住の外国人の数や、他自治体による外国人へのアンケート調査の結果を調べ、町内の外国人技能実習生などにもインタビューを実施。

 昨年12月には、気仙の高校生が探究授業や課外活動で取り組んできたプロジェクトを発表し合う「ケセンブーストDAY」で外国人向けのごみ分別表の取り組みについて語り、それが町の目にとまって実現に至った。
 現在、町内にはアメリカ、中国、ベトナムなど合わせて約100人の外国人が在住。外国語版の分別表は、外国人居住者の多い世田米地内の計5カ所に設置。燃やせるごみ、燃やせないごみそれぞれを日本含めて4カ国の言語で説明し、イラストも添えられている。
 自身のプロジェクトが実現したことを受け、「教育コーディネーターや先生方、中学校で発表を聞いてもらったおかげでいろんな人の頭に活動が残ったのだと思う。多くの人のつながりでプロジェクトが形になったので、発表を聞いてくれた人たちに感謝しています」と語る佐々木君。「これを第一歩として、日本人の私たちが気づかないような部分も改善していきたい。コロナが落ち着いたら、日本人と外国人の交流会も開きたい」と意気込む。
 地域創造学は、文部科学省による研究開発学校事業の一環。平成29年度に世田米小、有住小、世田米中、有住中、住田高の5校が指定を受けた。教育実践の中で浮かび上がる諸課題、時代に対応した新しいカリキュラムや指導方法の開発を目指し、学習指導要領等の国の基準によらない教育課程を編成・実践できる。指定後、町教委では「地域理解」「社会参画」「人間関係形成」「自立的活動」の四つの資質・能力からなる「社会的実践力」の育成を目指して取り組んでいる。
 町教育研究所の千葉邦彦指導主事は「このように、自分なりに地域課題を見つけて提言・解決していくのが地域創造学の目指すところ。子どもたちの考えを社会が受け止めて、ともによりよい社会をつくっていくのが社会的実践力。そういう意味で、目指すべき事例の一つになった」と語り、今後の地域創造学の発展に期待を寄せる。