統合推進望む意見多く 大船渡中と末崎中 〝教委主導〟求める声も  市総合教育会議

▲ 学校統合の現状や今後の方向性で意見交換を行った総合教育会議

 大船渡市の令和2年度第3回総合教育会議が26日、市役所で開かれ、8年度まで10年間を期間とする「市立小・中学校適正規模・適正配置基本計画」の進ちょくを巡り、意見交換が行われた。地域やPTA関係者による協議が物別れした大船渡中と末崎中の統合に関し、戸田公明市長が「教育委員会がリーダーシップをとるべき」と提言したほか、委員からは小学校統合も検討本格化を望む声が多く寄せられた。10年計画の折り返しが近づく中、新年度以降、市教委などによる合意形成に向けた動きのあり方が注目される。

 

適正規模化巡り意見交換

 

 総合教育会議は首長が教育委員らを招集し、教育行政の推進に向けて協議を行う場。戸田市長や小松伸也教育長、教育委員、担当課職員ら10人が出席した。
 本年度策定する市教育大綱の協議に続き、意見交換では市教委側が同基本計画の進ちょく状況について説明。計画は少子化による児童生徒数の減少に伴い、適正な学級数確保などを見据えて平成29年2月に策定したもので、29年度~令和3年度を前期、同4~8年度を後期とし、学校統合の検討・実施時期などを示している。
 このうち、中学校は「原則として各学年2学級以上」とし、生徒同士の人間環境に加え、生徒と教職員の人間関係に配慮した学級編成が可能な体制を整える方針。計画前の市内8校体制から、3校への統合を見据える。
 前期計画で「協議・実施」を掲げていたうち、昨年春には第一と日頃市、越喜来、吉浜が統合。さらに本年度は赤崎と綾里が閉校し、4月からは新設校の東朋中がスタートを切る。一方、大船渡と末崎の統合は未定となっている。
 両校の統合を巡っては、昨年度に続き、本年度も7回にわたり大船渡、末崎地区の関係者による学校統合推進協議会を開催。校名協議などで折り合いがつかず「機運が高まるまでは統合を行わない」との結論に至った。これを踏まえ、市教委では両地区内の各小中学校PTAを対象に、経過説明会も開催した。
 意見交換では委員の一人が「PTA役員は、1年ごとに交代する。毎年説明から始まるような流れで、どのように機運を高めることができるのか」と指摘。
 これに対し、戸田市長は「情報を一番持っている教育委員会がアクションを起こすべき」「教育委員会がリーダーシップを」と発言。学校名や校歌、校章に関しても、教委側で複数の案を示すといった対応の必要性に言及した。
 小松教育長は、PTAごとの経過説明会は、出席人数が少なかったものの、早期統合を望む意見が多くを占めたと報告。そのうえで「やはり、こちらから声をかけていかなければならないとは思う。意見を集約し、アンケートをどの範囲で行うかや、どのような段階を踏むべきかなど、今回の反省をもとに考えたい」と語った。
 別の委員も「協議のやり取りを見聞きし、子どもや保護者がどう思っているのかが見えにくかった。地域の意見が強いという印象がぬぐえない」「本来は、赤崎と綾里、大船渡と末崎は同じタイミングで統合する計画だった。大船渡と末崎の子どもたちも、気持ちを一つにして活動してきた。卒業生や在校生のことを考えると、複雑な気持ちになる」とし、統合推進への思いをにじませた。
 このほか、市教委側は、吉浜小で複式学級の学年がある現状や、日頃市小でも今後複式学級が生じる可能性も言及。計画では「原則として、各学年1学級以上」としている中、委員からは「一定規模の児童数が必要」との意見が出た。
 さらに、市内では唯一、大船渡地区だけが大船渡小と大船渡北小の2校体制で、大船渡小は震災前と比較し、児童がほぼ半減している現状も話題に。統合協議進展を見据えた発言も目立った。
 計画では、両校統合に関し、校舎は大船渡小を活用する方向性が盛り込まれている。委員の一人は、東日本大震災時に同校舎が浸水被害を受け、現在も津波注意報などの発令時には高台の大船渡中に避難する対応がとられている現状を挙げ「いったん避難すれば、解除されるまで戻ってくることができない。学校は本来、避難する必要がない高台にあるべきではないか」と提起した。