プレハブ仮設役割終える 県内すべてで退去完了 滝の里団地の最後の入居者が転居

▲ 滝の里仮設団地で退去を完了した村上さん

 東日本大震災後、県内に整備されたプレハブの応急仮設住宅で、最後に残っていた陸前高田市竹駒町の滝の里仮設団地入居者1世帯の退去が、30日に完了した。気仙3市町で4072戸が整備され、合わせて最大1万人超が暮らした仮設住宅は、震災から10年余りを経てその役目を終えた。県内でも特に大きな被害を受けた陸前高田市は新年度以降、仮設の暮らしを体験できる防災、減災体験施設として米崎町の仮設団地1団地の一部を活用することとしている。

 

 滝の里仮設団地で30日、パート従業員・村上サルバションさん(49)が市職員立ち会いのもと、退去する仮設住宅の鍵を閉めた。
 津波で気仙町の自宅が流され、震災から3カ月後の平成23年6月に同団地での生活が始まった。手狭な環境に不便さを感じた一方で、同じ棟には多くの知り合いが住み、「大変だったけど、イベントがあったり、ボランティアが来てくれたり、楽しい思い出もあります」と振り返る。
 4年前に夫の幸二さんが57歳の若さで亡くなり、「言葉で言えないほど悲しかった」。それでも災害公営住宅への転居は選択せず、夫が夢に見た自宅再建を目指した。
 待望の新居を同町今泉地区の高台に再建し、17歳の長男との2人で暮らしている。「最高の気分ですね」とほほ笑み、「家のベランダにイルミネーションを飾るのが楽しみ」と期待を膨らませる。
 県は、県内11市町村に315団地、1万3851戸の応急仮設住宅を整備。このほか、遠野市と住田町が独自に4団地133戸を建設した。
 気仙の整備数は、大船渡市が39団地1811戸、陸前高田市が53団地2168戸、住田町が3団地93戸。大船渡市は、令和元年度内に全入居者の退去と仮設住宅の解体を完了。住田町は昨年7月、入居者全員の退去を終えた。
 陸前高田市は、52団地2082戸が解体済み。滝の里仮設団地では津波で自宅を失った被災者のほかに、同市への派遣職員29世帯(2月末時点)が暮らしていたが、31日までにすべて退去する。
 同市は、震災の教訓伝承や風化の抑制につなげようと、旧米崎中の校庭に整備された神田仮設団地(整備数89戸)のうち2棟8戸を「3・11仮設住宅体験館」として存置する計画。仮設での暮らしを再現し、体験宿泊できるもので、設置工事は5月末までに完了する予定となっている。