ピーカンナッツ苗木育成施設完成 市が米崎町に整備 産地化推進の拠点(別写真あり)

▲ 完成したハウスで苗木を観察する上岡代表理事

研究棟前でテープカットを行う関係者

最適品種選定へ研究

 

 陸前高田市が米崎町の市有地に整備していたピーカンナッツの苗木育成研究施設が完成し、30日、現地で竣工式が行われた。国内で栽培に取り組んでいる例はほとんどなく、高収益が期待される作物。今月設立した一般社団法人が国産苗木を育苗しながら、同市の気候にあった最適品種を調査する。新年度には市中心部で加工販売施設の整備も計画し、「ピーカンナッツ発祥の地」を目指し、産地化や6次産業化を推進していく。


 竣工式には、関係者ら約20人が出席。戸羽太市長は「ピーカンナッツプロジェクトは市民も期待している事業。産業化に向けてきょうから新たなスタートだ」とあいさつした。
 施工業者の㈱佐武建設に感謝状が贈られたあと、代表者によるテープカットや施設看板の除幕、記念植樹が行われ、出席者が待望の施設完成を喜び合った。
 建設地は、総合営農指導センターやライスセンター西側で、施設は木造平屋の研究棟(広さ約80平方㍍)、育苗用の木骨ハウス(同185平方㍍)の計2棟。昨年10月に着工し、総事業費は6101万円。国の地方創生推進交付金を活用した。
 施設では鹿児島県指宿市から取り寄せた高さ約50㌢~約1㍍40㌢の10品種約370本を栽培し、生育を観察しながら産地化に向けて適した数品種に絞っていく計画。将来的には年間1000本程度の生産を目指す。研究棟では病害虫の診断などを行っていく。
 ピーカンナッツは北米原産のクルミ科落葉樹の実で、国内ではアーモンドの100分の1程度の消費量しかない希少性を持つ。栄養価が高く、アルツハイマー病予防にも効果があるとされる抗酸化物質を含む。
 市は新たな産業の創出、地方創生に向け、平成29年7月、東京大やピーカンナッツを使ったチョコレート製造・販売業を手がける㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市)との3者で、共同研究にかかる連携協定を締結。産学官連携でプロジェクトを進めている。
 昨年4月には、横田町、米崎町の畑2カ所で苗木の試験栽培を開始。指宿市から取り寄せた9品種90本を栽培し、早ければ来年秋にも実の収穫を見込む。
 市によると、苗木から安定的に実を確保できるようになるまでには、5~10年程度要する見通し。土地区画整理事業低地部などにモデルほ場を設けて普及にも当たる。
 また、市は中心市街地にピーカンナッツの加工・販売拠点を一体整備する。令和3年度着工、4年度の開業を計画し、6次産業化を推進する。
 市からの委託を受けて苗木育成研究施設を管理する一般社団法人・ピーカン農業未来研究所の上岡修代表理事(61)は「ピーカンナッツは陸前高田の未来に残す農業遺産。産地化を目指し、長い歴史を持つ高田松原のマツ、米崎りんごに次ぐ第3の原風景を形成していきたい」と意気込みを語った。