こだわりの一杯が1位に 大船渡の黒船 「いわて麺恋ラーメン総選挙」で

▲ 黒船が第1回「いわて『麺恋』ラーメン総選挙」で1位に

 大船渡市猪川町に店舗を構える人気ラーメン店「大船渡秋刀魚だし黒船」(岩瀬龍三店長)が、岩手めんこいテレビの番組「第一回いわて『麺恋』ラーメン総選挙」で1位に輝いた。同店で最も票を集めたのは、看板メニューの「秋刀魚だしラーメン 醤油」。岩瀬店長(57)は、「県産へのこだわりは1位だという自信がある。このこだわりが評価されたのだとしたらうれしい」と喜ぶ。
 同総選挙の順位は、今年1月に県民を対象に実施した「あなたの一番好きなラーメンは?」というアンケートの結果によって決定。アンケートでは好きな店とメニューについて尋ね、約5000件の回答があった。
 番組は3月23日に放送され、上位20位を発表。
 黒船が県内のラーメン店の頂点に立ったほか、同市大船渡町のキャッセン大船渡フードヴィレッジ内の2号店「貝だしラーメン黒船SECOND」が12位にランクイン。このほか、同市からは赤崎町の「そば処 櫻亭」も18位に入った。
 取材の申し込みがあった時点で「何位かには入っているようだ」と察した岩瀬店長。収録中に1位であることを伝えられ、「ドッキリでみんなに言っていると思った」という。
 トロフィーを手渡されてもまだ半信半疑だったが、取材陣がトロフィーを置いて帰った時にようやく1位を実感。放送翌日からさっそく反響があり、盛岡や平泉ナンバーの車を多く見かけるようになった。
 兵庫県の出身で、20年間を大船渡でラーメン職人として過ごしてきた岩瀬店長。「高級食材を使った方がおいしいが、それだとわざわざ内陸や県外から食べには来ないのでは。大船渡に人を呼ぶためには地のものを使っていかないと」と考え、県産、地元産の食材にこだわり続けてきた。
 イベントにも積極的に参加し、全国の有名店の店主らと知り合うこともあった。そうした人たちから店名入りののぼりをプレゼントされ、「恥をかかせてはいけない」と思いながらラーメンづくりに励んできた。
 県産、地元産へのこだわりの一方で、〝やり過ぎない〟ことも大切にしている。
 ファミリーレストランが少ない大船渡で、ラーメン店がその代わりとなっていることに触れ、「こだわりすぎると大衆性が失われてしまう。悪く言うと一流にはなれないということでもあるが、それよりも家族で食べに来て、子どもたちの思い出になる方がうれしい」と話す。
 昨年5月、新型コロナウイルスの影響で帰省を自粛している地元出身の学生を対象に、通販用冷凍商品を無償提供する取り組みを行った。受け取った学生から「子どもの時に食べに行っていました」というメールを受け取った時が一番うれしかったと振り返る。
 岩瀬店長は、「店を大きくすることで、選んでくれた人に恩を返したい」とし、身近な目標として「外部のイベントに積極的に参加すること」を挙げる。出店依頼を受けるだけでなく、自分から手を挙げて売り込んでいく。その際、〝岩手県で1位のラーメン店〟という看板は、大きな武器になると考えている。
 「自分の評価は今回の1位で十分。存在意義や大船渡にいる意味をよく考えるようになったが、縁があってうちにいる従業員たちが幸せになってくれたら、ここに来た意味があると思えるのでは」と岩瀬店長。〝従業員の生活基盤を作ること〟を人生の目標に掲げ、「飲食業に安定はないが、(1位になって)少しでも注目されることはありがたい。あぐらをかかずに新しいこともやっていきたい」とこれからを見据える。