待望の新市庁舎完成 中心市街地に再建 内覧会640人参加

▲ 市中心部に再建された新庁舎。5月6日に開庁する

 東日本大震災で全壊し、陸前高田市高田町の中心市街地に再建された新市庁舎の竣工式は18日、現地で行われた。同市の復旧・復興事業の最後の大事業と位置づけた整備は、震災から10年の節目で完了。関係者が行政機能の新たな拠点完成を喜び、一般向けの内覧会には約640人が参加し関心の高さをうかがわせた。開庁日は5月6日(木)。1階に交流スペース、最上階の7階に展望ロビーを配するなど市民や観光客が気軽に立ち寄れる施設を目指す。

 

5月6日に開庁

 

内覧会では目玉の7階展望ロビーに多くの人が集まった

 竣工式には約70人が出席。戸羽太市長が事務用物品を寄贈したプラス㈱、設計者の㈱NTTファシリティーズ東北支店、施工者の日本住宅・長谷川建設特定共同企業体に感謝状を贈呈した。来賓の鈴木俊一衆議院議員らが祝辞を述べた。
 その後の内覧会には、市内外の家族連れなどが足を運んだ。孫らと一緒に訪れた高田町の菊池栄一さん(74)は「立派で驚いた。建物にふさわしい市政を展開していってほしい」と期待した。
 高田町の就労継続支援B型事業所に通う熊谷倖晟さん(20)=米崎町=は、歩行器を使って施設内を見学し、「初めて入ってよかったです」と笑顔で話した。父の正明さん(49)は「各フロアの段差がなく、バリアフリーが行き届いている」と喜んでいた。
 中心市街地にあった3階建て(一部4階建て)の旧庁舎は震災で全壊し、市は被災を免れた学校給食センターに災害対策本部を設けた。
 平成23年5月、高田町鳴石に整備したプレハブの仮庁舎1号棟に行政機能の一部を移し、それ以降、計4棟を建てて順次業務を再開した。
 新庁舎は旧高田小跡地に整備し、平成31年2月に着工。建設位置を巡り、被災した中心市街地ではなく、津波の危険が少ない高台を望む声も少なくなく、市は施設の規模などを含め市民との懇談会や議会で協議を重ねた。結果、高田小跡地をT・P(東京湾平均海面)12㍍から同17㍍にかさ上げし、新築することが決まった。
 敷地は1万3000平方㍍で、延べ床面積は、旧庁舎とほぼ同じ5919平方㍍。事業費は46億6685万円で、震災復興特別交付税や被災施設復旧関連事業債を充て、市が7億6500万円ほどを負担する。
 1、2階は市民の利用が多い窓口機能を置き、1階南側の一角に自由に使える市民交流スペースを設けた。7階の展望ロビーからは市街地や高田松原を一望でき、奇跡の一本松に関する記念品などを常時展示し、震災支援への感謝を発信する。
 各課窓口には、車いすに座ったまま利用できるローカウンターや記載台を設置。多くの人の利用が見込まれる1、7階のトイレ付近は、視覚障害者の白杖(はくじょう)を感知すると、障害者ら向けトイレに誘導する音声が自動で流れる。
 災害時の行政機能まひを回避するため、屋上に設けた自家発電設備で停電時でも10日間程度、業務を行えるようにする。職員は5月の大型連休中に引っ越し作業を行い、6日から業務を開始する。
 戸羽市長は「交流スペースは、市民らが気軽に、自由に使えるような場とする。7階の展望ロビーでは市民や観光客にまちを眺めてもらい、中心市街地に近い場所に建てた意味を感じ取ってもらいたい」と話し、「震災10年の節目で無事完成しよかった。これまで以上に市民に寄り添い、親しまれる場としていく」と先を見据えた。