公共施設個別計画を策定 改築中心から長寿命化に転換 年間コスト3・6億円削減
令和3年4月21日付 1面

陸前高田市は、20日に開かれた市議会全員協議会で、3月に策定した同市公共施設個別施設計画を公表した。計画期間は本年度からの6年間。市が保有する施設ごとの劣化状況や維持・改築コストを見える化し、改修に関する統一的な方針を定めた。同計画と上位計画の「公共施設等総合管理計画」に基づき、施設の長寿命化対策を実施し、財政負担の軽減・平準化を図る。従来の改築中心から長寿命化に方針転換することで、今後40年間については、年間の維持・改築費が約10億円から約3億6000万円削減され、約6億4000万円になるとの試算を示した。
財政支出抑制へ
個別施設計画は、市保有の公共施設のうち、すでに長寿命化計画を策定している学校施設、公営住宅を除く122施設計199棟が対象。計画期間は公共施設等総合管理計画に合わせ、3~8年度の6年間で、それ以降は原則10カ年で設定している。
施設管理の方針は▽長寿命化による財政負担の軽減・平準化▽市民ニーズに対応した施設規模の適正化──の2点。これまでの建物の改築(事後保全型)から長寿命化改修(予防保全型)にシフトし、中長期的なトータルコストの縮減を図っていく。
長寿命化改修は、建物の目標使用年数を80年とすると、40年に1度の周期とする。屋根の断熱化や外壁の高耐久塗装などで耐久性を高める。
併せて使用20年の時点などで、建物の安全性を維持する大規模改造工事も従来通り行う。
この考え方のもと、計画では個々の施設の総合劣化度、改修の優先順位、改修・改築時期、維持管理方針を明記している。
それによると、令和8年度までに長寿命化改修を検討しているのは、5施設の計9棟。このうち米崎町の米崎地区コミセン(自然環境活用センター)は築40年を迎えるため、5年度までに地域と協議し必要かどうか決める。横田町の横田地区コミセン(横田基幹集落センター)は劣化が進んでいることから6~8年度に実施する。
今後の長寿命化型の維持・改築コストは、40年間の総額で約257億円と推定。従来の改築中心の場合だと約400億円で、約143億円の削減につながると試算している。改修する建物の数は年度ごとにばらつきがあるため、改修コストが単年度に集中しないよう、劣化状況、優先順位を見極めながらコストの平準化を図る。
市財政課の黒澤裕昭課長は「持続可能な行財政運営を行っていくうえで、公共施設の適正な管理は必須。計画に基づき、予防保全型の改修を計画的に行うことで長寿命化を図り、財政支出の抑制を図っていきたい」と見通す。
長寿命化改修などの整備水準は別表の通り。