新型ウイルスの発熱外来も 県立大船渡病院救命救急センター 24時間体制で急患に対応

▲ 感染症対策を行いながら救急患者に対応する大船渡病院救命救急センター

 大船渡市の県立大船渡病院救命救急センター(横沢友樹センター長)は、24時間体制で救急搬送される患者を受け入れ、夜間や土・日曜日、祝日の救急外来に当たっている。センター内には、新型コロナウイルス感染症に対応する同病院の発熱外来も開設しており、重症患者にも対応できるよう体制を整えている。
 同センターは平成10年に開設し、救命救急科と災害医療科の2科からなる。救急病棟は、ICU(集中治療室)6床とHCU(高度治療室)14床の計20床。
 診療体制は、医師3人(専従1人と本院との兼任2人)、看護スタッフ36人(看護師34人、看護補助者2人)。平日の日中は専従医師1人と研修医1、2人で、休日や夜間は本院からも応援を得て、内科系と外科系の医師各1人と研修医1人で診療を行っている。
 救命救急科は、救急車で来院する患者の初期診療に24時間体制で当たり、夜間、土・日曜日、祝日の救急外来に対応。重症感染症、多発外傷、心肺停止後等の人工呼吸器や血液浄化が必要な患者の集中治療、脳死ドナーの管理なども行っている。昨年は、同病院で脳死と判定された患者から摘出した臓器を必要な患者に提供する、初の脳死下臓器提供も実施された。
 救急患者の受け入れは、平成30年度が1万3373人、令和元年度は1万2575人、2年度は9430人。このうちの約2割が入院措置となった。昨年度の手術件数は16件(うち緊急は9件)、麻酔件数は264件(同56件)となっている。
 新型ウイルス感染症に対応した発熱外来では、発熱などの感染を疑う症状が現れていたり、かかりつけ医での抗原検査で陽性反応が出た患者らがPCR検査を受ける。夜間に来院した発熱患者が待機して検査も受けられる、専用の待合室も設けている。
 万が一、新型ウイルスの重症患者が発生した場合でも対応できるよう、人工呼吸器や人工心肺装置ECMO(エクモ)を複数台確保。ECMOの利用については、医療スタッフ間でシステムを構築しているという。
 救急病棟では、ナースステーションの周囲をビニールスクリーンで囲うなどの各種感染症対策を施す。新型ウイルスの患者が急増し、同センターでも入院を受け入れる状況となった場合には、陰圧装置付きのエアカーテンも設置して対策を徹底するとしている。
 一方、災害医療科は、国内各地で起こった災害に対し、要請があった際にDMAT(災害医療チーム)を派遣。近年では、平成28年台風10号による岩泉豪雨災害、30年北海道胆振東部地震の被災地で医療活動を展開した。大船渡市内で発生した大規模な事故現場にも、医師や看護師を派遣している。
 救急外来の受付時間は、平日が午後5時15分~午前8時30分で、土・日曜日、祝日は24時間体制。診療を希望する際は、事前にセンターに問い合わせ、症状などを相談するよう呼びかけている。症状の緊急度や重要性を踏まえて、より早期に診療が必要な患者を優先して対応することから、理解を求めている。
 医師不足等の課題、感染対策を徹底しながらの新型ウイルスへの対応などもある中、同センターでは気仙の住民が安心、信頼できる救急医療の実践を目指す。
 横沢センター長(40)は「専門医の不在や医師の負担軽減のため、緊急性がないと判断される場合は、翌日以降の入院や治療開始をお願いすることもある。しかし、当センターは地域の方々の命を救うべく、限られた人数で可能な限りの対応を行いたいと考えているので、ご理解をいただきたい」と話している。