景勝地復活への願い込め、高田松原で再生植樹祭、マツ苗500本余り植える(別写真あり)

▲ 植栽地にマツ苗を植樹する参加者ら

 陸前高田市のNPO法人・高田松原を守る会(鈴木善久理事長)は25日、東日本大震災で約7万本のマツが流失した高田松原で「再生植樹祭」を開催した。市内外から約300人が参加し、震災以前のような白砂青松の景勝地復活を願いながら、マツ苗500本余りを植樹。平成29年から続けてきた植樹祭は5月9日(日)、最終回を迎え、植栽本数が目標の1万本に達する見通し。

 

5月、1万本植栽達成へ

 

 植栽地で開会式と植え方の説明が行われたあと、目印に沿って、高さ50㌢ほどのクロマツの苗木合わせて544本を植えた。
 参加者らは、スコップで穴を掘り、土を水で潤してから丁寧に苗木を植えた。親子や高齢者のグループ、復興支援の関係者などさまざまな人が作業を行い、思いを苗木に託した。
 高田町の佐藤葉子さん(32)は「植樹祭にはこれまで3、4回参加している。今回も、震災以前のような高田松原に戻ってほしいと願いながら植えた。時間はかかると思いますが、これからも成長を見守っていきたい」と期待する。
 大船渡市盛町の佐々木紀子さん(79)は、高田高校卒業の同級生や友人らと集まり、今年で80歳を迎えるお祝いも兼ねて参加。「みんなと一緒に植樹ができて楽しかった。苗木が無事に大きくなり、ゆくゆくは、高田高校の校歌にあるハマナスの花が砂浜に咲く光景も広がってほしい」と願っていた。
 江戸時代から植林の歴史がある高田松原は、約7万本ものマツと砂浜からなる白砂青松の景勝地として知られ、昭和15年には国の名勝に指定。震災前は、毎年夏になると10万人余りの観光客でにぎわった。
 平成23年、震災の大津波により、高田松原のマツは奇跡の一本松のみを残して流失し、砂浜も消失した。25年には、市から申請を受けた県が高田地区海岸災害復旧事業に係る各種工事をスタートさせ、マツ林を形成するための地盤も造成した。
 このうち、マツ苗の植栽場所は市有地8㌶に設定。28年に試験植栽が始まって以降、県が3万本、守る会が1万本のマツ苗植栽を進めてきた。
 守る会などによる再生植樹祭は29年にスタート。東京都の一般財団法人・ベターリビングや同・日本緑化センターなどと連携し、3年かけて、9000本余りの苗木を植えた。
 当初は31年春までに1万本を植え終わる予定だったが、復興工事の関係で一部エリアで植栽できず、残る900本余りの苗植栽が1年延期。さらに、昨春行われるはずだった植樹祭も新型コロナウイルスの影響で中止となり、今年に持ち越しとなった。
 守る会では、新型ウイルスの感染対策を講じて最後となる植樹祭を計画。3日間行う計画だったが、初日が天候悪化で中止になったため、今回と5月9日の2日間で行うこととなった。
 守る会の千田勝治副理事長(72)は「感染対策で事前受付を行わなかったため、参加者数が当日になるまで分からないという状況だった。2日間で作業が終了するかという不安もあったが、今回半分以上の苗木を植えてめどが立ち、ほっとした」と語る。
 植樹祭最終日には残る苗木約380本を植え終わる予定。千田副理事長は「協力してくださるみなさまに感謝し、思い出に残る植樹祭となるよう、最後までやりとげたい」と意気込んでいた。