ゆとりを持って頂上へ 雨の五葉山にハイカー 自然保護協議会が2年ぶりに「山開き」式典(別写真あり)

▲ ゆっくりとした歩みで山頂を目指すハイカー

 大船渡、住田、釜石の3市町にまたがる本県沿岸南部の最高峰、県立自然公園・五葉山(1351㍍)で29日、「山開き」祈願祭行事が行われた。昨年は新型コロナウイルスの影響で式典を見合わせたため、2年ぶりの開催。雨天の一日となったが、ハイカーは木々の芽吹きを楽しみながら山頂を目指した。

 

 「山開き」祈願祭は、3市町で構成する五葉山自然保護協議会が主催。大船渡市と釜石市境の赤坂峠登山口(721㍍)で行われ、自然保護協会や行政などの関係者をはじめ、登山愛好者ら約70人が参加した。
 山の安全や登山を祈願する祝詞のあと、関係団体の代表らが順次玉串をささげた。同協議会長を務める野田武則釜石市長のメッセージが紹介されたほか、登山にあたっての注意説明も行われた。
 登山口では式典前から雨が降り始め、山頂は厚い雲に覆われた。例年よりも登山者は少なかったが、県沿岸部の在住者らが山頂を目指し、カラフルな登山ウエアの姿が続いた。
 グループごとに間隔を確保するなど、ゆとりを持ちながら歩みを進め、感染予防にも配慮。足を止め、会話を交わす時にはマスクを着用する姿も見られた。
 グループで登山に訪れた釜石岳友会の船越毅会長(77)は「五葉山は地元の山であり、山開きは私たちにとって一年の始まり。新型ウイルスの影響もあって、最近は遠出せず、地元を楽しむ機会が増えている。年齢を重ねるごとに、違った魅力を発見し、新鮮な思いになる」と話していた。
 山開きは、ここ数年大型連休が始まる『昭和の日』に行われている。昨年は4月28日に安全祈願のみを行い、今年の式典は規模を縮小。例年こだまするホラ貝の吹奏などは見送られた。
 五葉山は、山頂まで比較的緩やかな道が続き、家族連れや高齢者の人気も高い。連休期間中のほか、ツツジやシャクナゲが咲く6月から7月にかけても、にぎわいが予想される。
 9合目付近に構える石楠花荘は昨年度に続き、避難小屋としての機能があることから閉鎖はしないが、新型ウイルス感染予防への協力を求める。天候の急変や疲労で屋内での休養を要する場合など、必要最小限の利用に限定。利用時は▽換気の悪い密閉空間▽多数が集まる密集場所▽間近で会話や発声をする密接場面──の「3密」の回避を促す。
 宿泊をはじめとした夜間利用は、体調不良をはじめ昼間の時間帯に下山できないなど緊急の場合を除き、自粛を要請。石楠花荘と別棟で立地しているトイレの利用も規制はしないが、消毒スプレーの携行など利用者自身での対策を呼びかけている。