息ぴったり 堂々デビュー オーケストラを作る会 始動10カ月、初コンサート(別写真あり)

▲ バイオリンとチェロの息の合った演奏を披露する出演者

 大船渡市内外の音楽愛好者らでつくり、昨年からバイオリンとチェロの初心者ら向けのレッスンを行っている「大船渡にオーケストラを作る会」(桑原裕子会長)は4月29日、盛町のリアスホールでデビューコンサートを開いた。昨年6月の活動開始からわずか10カ月とは思えない息ぴったりの演奏を初披露。来場者から拍手喝采を受け、会員たちはさらなるレベルアップを誓った。

 

さらなる飛躍期す

 

 気仙地区や内陸部など、地域を問わずレッスンに参加している約30人の初心者と講師陣が出演。1部は一部受講者がヴィヴァルディやバッハの曲をソロ演奏。大船渡市出身のピアニストで発起人の桑原会長=神奈川県相模原市、バイオリン講師の高橋宗芳さん=同川崎市、チェロ講師の丹羽あいりさん=東京都=のプロ3人も圧巻の演奏で約120人の聴衆を魅了した。
 2部は出演者全員がそろい、桑原会長のピアノ伴奏に合わせ、『むすんでひらいて』『ちょうちょう』『キラキラ星変奏曲』など6曲を演奏。呼吸を合わせ、腕や手先の神経を研ぎ澄まし、優雅な音色を響かせた。
 同会は東日本大震災後、大船渡市でチャリティーコンサートを開くなど復興支援を続けてきた桑原会長を中心に、気仙地区にも管弦楽器愛好者の輪を広げ、オーケストラの立ち上げを目指そうと昨年1月に発足した。
 現在、幼児から70代までの男女約50人がレッスンを受講。高橋さんが昨年6月から、丹羽さんが同11月から毎月1回、3日間を基本に大船渡市や陸前高田市で指導してきた。
 初舞台でヴィヴァルディの曲をソロ演奏した菅原由衣さん(高田小6年)は「間違えないよう一心になり、しっかりピアノに合わせられた。合奏も10カ月でこんなに上達でき、みんなの力をすごいと感じた。次はもっと難しい曲にチャレンジしたい」と意欲を高めた。
 気仙地区でのオーケストラ誕生は、㈱東海新報社の前代表取締役で、大船渡市のビッグバンド「サンド・パイパース・オーケストラ」の団長を務めた故・鈴木英彦氏にとっても長年の悲願だった。鈴木氏は同会の発足を後押ししていたが、昨年1月に亡くなった。
 この日は舞台袖に鈴木氏が笑顔で写る遺影を置き、初舞台を見守った。桑原会長は演奏終了後、遺影を抱えてあいさつし、鈴木氏が「気仙にオーケストラをつくりたい」と熱望していたエピソードを紹介。「きょうは(鈴木氏も)一緒に参加してくれていると思う」と感慨深げに語った。
 10カ月を振り返り、「(レッスン受講者)皆さんの頑張りは目覚ましく、あっという間にデビューを迎えることができた。『大船渡オーケストラ』を名乗れるようにこれからもっと発展させていきたい」と飛躍を期した。