「母の思い」見ごろ迎える シンボルロードのハナミズキ 五月晴れに避難路示す花(別写真あり)
令和3年5月4日付 1面

陸前高田市高田町を南北に貫くシンボルロード(市道曲松中和野線)で、道の両側に植えられたハナミズキの花が開花した。「二度と津波で犠牲者を出すことがないように」という母親の思いを込めて避難路沿いに植えられた花木は、「母の日」の9日を前に見ごろのピークを迎えそうだ。
ちょうど「母の日」のころに開花を迎えるハナミズキの街路樹は、同市の「ハナミズキのみちの会」(淺沼ミキ子代表)などが植えたもの。高田町の国道45号が通る高田松原の海沿いから、山側の「北幹線」までを結ぶ約2㌔の道沿いに、濃い桃色と白の花木が交互に立ち、五月晴れの下で誇らしげに咲いている。
シンボルロードは幅員25㍍。両側の歩道幅が各6・5㍍と幅広いのが特徴で、海沿いから高台部へ抜ける主要避難道路に位置付けられる。東日本大震災で長男の健さん(当時25)を亡くした淺沼代表は、避難の重要性を広く後世に伝えようと平成25年に同会を立ち上げ、避難路の目印とするための植樹活動などを続けている。
令和元年4月に開通したシンボルロードでは、海側の入り口に「避難路」の文字を記した土台と、絵本『ハナミズキのみち』の表紙を模した碑も設置。土台部分にはほかの文字より太い書体で「この道を より高い所へ 駆け上がれ!」と刻まれている。
大震災の発生から11年目の春。「津波でわが子を失う苦しみを、二度と誰も経験することがないように」という切なる祈りがつくりあげた〝みち〟に咲く花木は、植樹当時より大きく育ち、満開の花とともにそこに込められた母親の思いを伝えている。