市長らの給料削減案否決 吉浜太陽光計画の事務処理問題 大船渡市議会

 大船渡市議会は10日、臨時会を開き、戸田公明市長と志田努副市長の6月給料を10%分削減する内容の条例一部改正案を否決した。戸田市長は吉浜地区太陽光発電事業に伴う市有地の賃貸借契約の変更に関し、市と事業者との間で日付をさかのぼって契約手続きを行った不適正な事務処理について陳謝し、責任を明確にする姿勢を強調。一方、この問題では住民有志が刑事告発を行い、捜査当局の結論が明らかになっていない中、現時点で自らを処分する対応に議会の理解は得られなかった。

 

捜査途上での対応に理解得られず

 

 市有地の賃貸借契約の変更を巡っては、住民有志で構成する「荒金山・大窪山太陽光発電所建設に反対する会」が昨年、市議会に調査を求める請願書を提出。総務常任委員会の調査で市当局は、昨年3月31日付の変更契約を巡り、実際には4月に入ってから契約を行うなど日付をさかのぼって事務処理を進めたことを認めている。
 臨時会で戸田市長は、昨年3月以降の経緯を「吉浜地区での反対署名の動きなどを踏まえ、事業者から市に対して、計画を変更するとの申し出があった。住民説明や関係法令に基づく国、県への申請など、かなりの時間が見込まれ、平成32年(令和2年)3月末までとする工事着手期限を延長することとした」と説明。
 土地賃貸借契約に基づき、事業者から市に対し、期限延長をせざるを得ない理由を付した書面を提出してもらう必要もあったが、提出は3月30日だったという。戸田市長は「年度末で業務が繁忙であったことや、部署間の連携が不十分であったことから、事務処理が新年度に入ってからとなった」と語った。
 さらに「手続き上、当該契約の継続性を確保するため、やむを得ず行ったものであったが、事務処理として不適正であり、行政不信を招く結果となったことを大変申し訳なく、深く反省している」と陳謝。事務担当の職員らに口頭厳重注意処分としたことも明かし、今後は関係課間の情報共有・連携や事務処理のチェック体制強化など、信頼回復に努める姿勢を強調した。
 この問題を巡っては「反対する会」の関係者が昨年度、虚偽有印公文書作成罪や同行使罪にあたるとして、市長と副市長を岩手県警本部に刑事告発した。複数議員から「捜査途上で起訴、不起訴といった処分の結論が見えない中で、なぜ今か」との指摘が出た。
 当局側は答弁で、これまでの内部調査で不適切な事務手続きの流れを確認したことを説明。さらに▽担当職員は「日付を間に合わせる」といった理由以外に他意はなかった▽市側に債務負担や金額の損害が発生していない──などを踏まえ、当局内では一定の区切りに達した現状も示した。
 また、志田副市長は「昨年9月以来、議会で取り上げられてきた問題。事務的に検証した結果について、これを一区切りとして、態度を示す考えに達した」などと答弁。しかし、議員からはその後も、現段階で責任を示す姿勢に対して厳しい発言が続いた。
 議長を除く17人による起立採決では、賛成は7人にとどまった。会派別にみると、新政同友会(4人)は全員が起立した一方、最大会派の光政会(7人)は対応が分かれた。改革大船渡(3人)と日本共産党大船渡市議団(2人)、無会派(1人、公明党公認)は反対に回った。
 臨時会終了後、記者団に応じた戸田市長は「議員の皆さんには、さまざまな思いがあると思う。残念ではあるが、議会を通じて当局の考え、市長、副市長の気持ちは伝わったのではないかと思う」と語った。
 平成22年12月の市長就任以降、当局提出議案が否決されたのは例がないという。志田副市長は、刑事告発を巡る動きで捜査当局の結論が明らかになった後に、責任の形を再度示す可能性も示唆した。