越喜来漁協が畜養ウニを初試験出荷 県の漁港多目的利用調査で 実入りアップを確認

▲ 畜養ウニが入った円筒かごを浪板漁港から引き上げる越喜来漁協と県の関係者

 大船渡市三陸町の越喜来漁協(舩砥秀市代表理事組合長)は11日、昨年度から県の調査事業に協力する形で畜養してきたウニを試験的に初出荷した。越喜来湾でも餌となる海藻不足で、実入りが悪いウニが増加していることを受け、浪板漁港内に移植し、人工的に餌を与え、実入りが向上したことが確かめられた。同漁協と県は本年度も調査を行い、今後の畜養の事業化につなげたい考えだ。

 

試験出荷された越喜来漁協の畜養ウニ

 越喜来漁協は、漁港施設を有効活用し、漁村の活性化や新たな養殖手法の構築を目指す県の「漁港多目的利用調査事業」に協力し、昨年の10月下旬にウニ約500個を浪板漁港の防波堤内側に移植。長さ2㍍、直径60㌢の鉄筋性の「円筒かご」など四つのかごに分けて水深約2㍍につるし、同漁協が週に2回、塩蔵コンブを与えてきた。
 1カ月ごとに約10個ずつ実入りの変化を調べ、県の調査期間が終了した2月中旬時点で実入りの状況を示す「生殖腺指数」は10月に比べ、各かごで6〜9倍超にアップした。同漁協では、さらなる実入りの増加や色の向上を見込み、県の調査期間終了後も餌を与え続けた。
 11日は、同漁協と県の関係者が残っていたウニを円筒かごごと同漁港から引き上げ、約90個(殻付き約7・9㌔分)を同町越喜来の三陸ふるさと振興㈱に試験出荷。同社で殻むきした結果、生殖腺指数は約半年間で16倍超にアップしたことが分かった。同社が運営する道の駅さんりくで12日、生ウニとして販売され、完売した。
 三陸町では、綾里漁協(和田豊太郎代表理事組合長)もウニの海中の生息密度の適正化と新たな出荷モデル構築につなげる県の「黄金のウニ収益力向上推進事業調査業務」の委託を受けて畜養に取り組み、4月下旬に同社に初出荷している。
 同社の寺嶋浩幸業務一課長は越喜来漁協で畜養したウニについて、「身が肥え、色も良く殻付きでも販売できる質だ。(畜養により)各漁協と連携して年間通して販売できる仕組みをつくっていきたい」と期待感を示す。
 同漁協の舩砥代表理事組合長は「殻の中に餌が残っていたので餌を十分に食べたことが分かり、実入りも色も良くなった。磯焼け対策を含む将来的な畜養の事業化に向けて関係機関と連携し、試験を進めていく弾みがついた」と手応えを語る。
 漁港多目的利用調査事業は昨年度、宮古市と普代村でも行われた。県は本年度も越喜来漁協と連携し、時期を変えて畜養調査を行い、作業の軽労化、効率化を探り、養殖手法を確立していきたいとしている。