町民が住民監査請求 三木、ランバー問題で 当時の町長と議員の責任追及

▲ 記者会見を行った泉氏㊧と齋藤弁護士

 住田町世田米の泉彰氏(73)が12日、昨年破産した同町の三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)への過去3度にわたる融資を巡り、貸付金が回収不能となったことによって町が被った損害について、町側が当時の町長や町議に対して損害賠償請求権を行使することを監査委員から勧告するよう求める住民監査請求を行った。町監査委員事務局は請求書を受け付け、今後、監査委員が受理するか否かを決定する。住田町における住民監査請求は、町制施行後初めて。
 泉氏と代理人の齋藤拓生弁護士(宮城県仙台市・つばさ法律事務所)が同日、監査委員事務局を訪れ、紺野仁代表監査委員に請求書などを提出した。
 このあとの記者会見では、齋藤弁護士が請求内容について説明したあと、泉氏が「融資がうまく使われておらず、ただ税金をつぎ込んだだけ。住民として、いてもたってもいられなかった」と監査請求に至る思いを語った。
 請求書によると、前町長の多田欣一氏と当時の町議は、三木とランバーの経営が平成18年4月の時点ですでに破綻し、融資しても回収不能であることを認識または容易に認識し得たとし、多田氏は融資を提案すべきではなく、当時の町議も各融資を承認すべきではなかったと指摘。多田氏と当時の議員は、貸付金が回収不能となったことによって町が被った損害について、損害賠償責任を免れないとした。
 齋藤弁護士は「無責任な融資で町に損害を与えた当時の町長と議員は、町に対して損害賠償責任があり、町は損害賠償責任を追及すべき」と語った。
 町は現在、三木、ランバー両事業体の連帯保証人に対し債務支払いを求める裁判を行っているが、同弁護士は「保証人に責任があるかどうかは今後裁判で明らかになるが、それとは別に、責任を取るべき人がいるのであれば、きちっと取っていただきたい。その一つが前町長と当時の議員なのではないか」とした。
 請求書の提出を受け、監査委員は住民監査請求として必要な要件を備えているかを審査し、60日以内に受理するか却下するかを決定する。
 請求人側は、請求が不受理や棄却となった場合、町側が前町長と当時の町議に損害賠償請求を行うことを求める住民訴訟も視野に入れている。
 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。18年度、19年度に町から合わせて約7億9000万円の公金融資を受けており、26年度から年度当たり約3100万円を町に償還する計画だったが、定められた額の償還ができない状況が続いていた。
 このため、町は29年、両事業体や連帯保証人に立木未収金を含めた計10億円超の支払いを求める調停を大船渡簡易裁判所に申し立てたが不調に終わった。その後、両事業体は事業継続を断念し、昨年7月31日付で盛岡地方裁判所一関支部に破産を申請。同8月14日付で同支部から破産手続き開始決定を受けた。
 これに伴い、町は昨年10月、両事業体の連帯保証人らに貸付金残金や利息、遅延損害金など合わせて約10億5000万円の支払いを求めて提訴した。