復興の歩み 東京大会へ 巨大人形「モッコ」が発信 オリ・パラ文化プログラム 地元団体もパフォーマンス(動画、別写真あり)
令和3年5月16日付 7面
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が主催する、東京2020大会公式文化プログラム・東京2020NIPPONフェスティバル「しあわせはこぶ旅 モッコが復興を歩む東北からTOKYOへ」は15日、陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で開かれた。東北と東京の絆を結ぶ役割として生まれた巨大人形「モッコ」の操演が行われ、会場を魅了。地元団体もパフォーマンスを展開し、モッコとともに東日本大震災からの復興の歩みとこれまでの感謝を東京大会に向けて発信した。
同フェスティバルは、日本が誇る文化の発信、共生社会の実現に向けた多様な人々の参加や交流の創出などを目的に開催。「しあわせはこぶ旅」は組織委が主催する文化プログラムの一つで、「東北復興」をテーマに岩手、宮城、福島の3県や東北絆まつりと連携して行う。
文化プログラムの第1弾にもなった岩手会場は、震災で甚大な被害を受けながらも、国内外の支援を得て復興へと歩みを続けている陸前高田市。復興祈念公園の芝生広場に会場が設けられ、来場者が詰めかけた。
司会は、イベントのクリエイティブディレクター・箭内道彦氏と高田高校3年の大友結衣さん、菅野新君が担当。大友さんは「地元の魅力を多くの人に伝えられるよう頑張りたい」と、菅野君は「東北から東京へ幸せを運ぶお手伝いがしたい」と意気込みを語った。
主催者を代表し、同組織委の橋本聖子会長は「東北の思いを託されたモッコが、東京へ向かう姿をぜひ見届けてほしい。東北の復興と、東京大会成功への思いを託したい」とあいさつ。達増拓也知事、戸羽太市長が歓迎の言葉を述べ、国内外からの支援に感謝した。
続いて、この日の主人公・モッコが登場。ベースデザインや世界観は絵本作家の荒井良二さんが手がけ、人形劇師の沢則行さんが造形。脚本家の宮藤官九郎さんが名付け親となっている。
鉄や竹、布などを材料に約300日をかけて作られたというモッコは身長10㍍、重さ1㌧。重機や操演者19人によって、命が吹き込まれた。
ステージでは、いがみあっていたグループがモッコとの出会いによって絆を結ぶ様子を、さまざまなスポーツの技術やダンスなどを交えて表現。さんさ踊りなどのはやしに乗せ、モッコが生き生きと踊る姿も見せた。
中盤では、地元の高田高校書道部と氷上共鳴会氷上太鼓、釜石市の錦町虎舞、青森県黒石市の千葉勝弘社中がパフォーマンスを披露。被災地の状況や復興支援に対する感謝の思いなどを届けた。
最後は、再びモッコのステージを展開。芸人・小説家の又吉直樹さんが執筆したオリジナルストーリー「モッコの物語」が歌手・石川さゆりさんの朗読(録音)で紹介され、モッコは東京を目指し、宮城へと旅立った。
大船渡市大船渡町の新沼千代子さん(59)は「とても大きく芸術的な人形で、見ることができて良かった。陸前高田でこのようなイベントが開催されて素晴らしい。五輪は見たいけど、観客を入れて開催するかどうかなど検討が必要だと思う」と話し、一緒に鑑賞した孫の千夏ちゃん(5)は「おばあちゃんと一緒に見られて楽しかった」と笑顔を見せた。
「しあわせはこぶ旅」は今後、22日(土)に宮城県岩沼市、29日(土)に福島県南相馬市、7月17日(土)に東京都の新宿御苑で予定されている。