マツ苗計4万本 植栽完了 高田松原を守る会 地元高校生と最後の植樹(動画、別写真あり)

▲ マツ苗を植え無事の成長を願う高校生

 陸前高田市のNPO法人・高田松原を守る会(鈴木善久理事長)は18日、同市の高田松原で地元高校生らとともにマツ苗の植樹を行い、目標としてきた1万本の苗木植栽を完了した。これにより、東日本大震災後から植えてきた苗木は、昨年までに県が植えた分も含め計4万本を達成。計画されていたすべてのマツ苗を植え終わり、守る会メンバーは「成木となる50年後を見据え、陸前高田の財産である高田松原をこれからもみんなで守っていきたい」と引き続きの保全活動を誓う。

 

計4万本の苗木植栽が完了したマツの植栽地

県と合わせ目標本数に達す

 

 「最後の植樹会」と銘打ち行われたこの日の植樹には、戸羽太市長と高田高校(坂本美知治校長、生徒365人)の2年生49人、守る会メンバー、定期的に植栽地を訪れているボランティアらが参加した。
 冒頭、守る会の千田勝治副理事長(72)は「(高校生の)みなさんに最後の植樹をしてもらえることを喜んでいる。40、50年後、みなさんが大人になった時に、この松原でマツを植えたことを子どもたちに伝えてほしい。きょうは楽しみ、思い出に残る日にしてもらいたい」とあいさつ。
 戸羽市長は「高田松原は、陸前高田市にとってはふるさとの中のふるさと。復興事業を進めるにあたっても、再生に反対する声はなかった。ここまで活動を続けてきた守る会のみなさんに感謝し、高校生のみなさんには、30〜50年後のすばらしい松林を想像してもらいながら苗木を植えてもらいたい」と述べた。
 その後、戸羽市長が、震災前の高田松原由来の松ぼっくりをもとに育てられた約2㍍ほどの苗木を植樹。生徒らは、守る会メンバーやボランティアらの指導のもと、高さ50㌢ほどのクロマツの苗木合わせて250本ほどを植えて、守る会が目標としてきた計1万本の植栽完了をともに喜びあった。
 三川燿君は「震災後、地元で復興に関わる活動をしたいという思いがずっとあった中、今回の植樹に参加することができてすごくうれしい。自分の手で植えたこの苗が、昔の高田松原のマツのように、力強く育っていってほしい」と思いを託していた。
 江戸時代から植林の歴史があり、白砂青松の景勝地として知られた名勝・高田松原は、平成23年の大津波で約7万本あったマツが流失した。
 これを受け、県は25年から高田地区海岸災害復旧事業に係る各種工事をスタートさせ、マツ林を形成するための地盤を造成。マツ苗の植栽場所は市有地8㌶に設定し、28年に試験植栽が始まって以降、県が3万本、守る会が1万本のマツ苗植栽を進めてきた。
 このうち、守る会は東京都の一般財団法人・ベターリビングや同・日本緑化センターなどと連携し、一般参加を募っての「再生植樹祭」で29年から31年までに9000本余りのマツ苗を植栽。計画では同年で植樹を終える予定だったが、復興工事の関係で900本余りの植栽を見送り、昨春も新型コロナウイルス感染症の影響で中止した。
 今年は計3回の再生植樹祭を計画したが、うち2回は悪天候や新型ウイルスの影響で中止。残された約350本の苗木のうち、100本ほどを守る会役員やボランティアらが植えたうえ、以前から同校が奉仕活動を希望していたことから、最後の植樹会が実現した。
 県のマツ苗植栽分は昨年6月までに完了。計4万本の苗木植栽は今回の植樹をもって達成され、植栽地では今後、苗の成長を促すための草刈りのほか、数年後は間伐などの作業も行われていく。
 千田副理事長は「高田松原の環境を守ることは、地元の人たちみんなでやることに大きな意味がある。苗木の植樹活動はそんな思いから始まり、5年を経てようやくこの日を迎えられたことをうれしく思う。全国から見てもすばらしい景観であった高田松原の再生を目指し、今後も地域のみなさんとともに保全活動を続けていきたい」と先を見据えていた。