今後100年石灰石採掘へ 太平洋セメント 上有住・袰下鉱山の竣工式(別写真あり)

▲ 坑道内部を見学する出席者ら

 大船渡市赤崎町に大船渡工場を構える太平洋セメント㈱(本社・東京都、不死原正文社長)が住田町上有住などで展開してきた袰下(ほろし)鉱山開発工事が完了し、19日に現地で竣工式が開かれた。セメントの原料となる石灰石の長期確保などに向けた事業で、4月から操業が始まっている。新たに開発された袰下鉱山は、向こう100年間に渡って石灰石の採掘が可能と見込まれており、関係者は新たな鉱山開発が地域の振興や発展にもつながるよう期待を込めた。

 

地域振興・発展にも期待

 

 同工場ではセメントや生コン用骨材の原料を採掘すべく、日頃市町の長岩と坂本沢、住田町世田米・大平の3地区に鉱山を設け、鉱量を確保してきた。このうち、長岩では平成25年3月に採掘を終了。その後は残る2地区で作業を行ってきた。両地区で採掘した石灰石はベルトコンベヤーで日頃市町石橋の貯鉱場へ運搬し、岩手開発鉄道の貨車で大船渡工場へと輸送している。
 新たな採掘地として開発された袰下鉱山は、平成28年度に開発事業が本格化。同年から令和元年にかけて、大平までを結ぶ全長約7㌔のベルトコンベヤー用トンネルの掘削を展開。平成30年から令和元年には、上有住のめがね橋付近で国道340号をまたぎ、内部にベルトコンベヤーを通す全長約130㍍の橋りょうを整備。同年から令和2年に坑外破砕室の建築工事などが進められ、今年3月に工事が完了、4月に本格稼働を開始した。
 この日の竣工式は、現地破砕室近くで開かれ、不死原社長や戸田公明大船渡市長、神田謙一住田町長、関係者ら合わせて約30人が出席。神事では祝詞奏上や玉ぐし奉てんなどが行われ、出席者らは今後の安全な操業を祈念した。
 不死原社長は「震災から10年という節目の年に新しい鉱山の完成を迎えた。大船渡工場も津波を受けたが、なんとかここまでやってきた。これから100年間、セメントを生産することが可能となる。大船渡、住田のこれからの100年とともに育っていき、地域と企業の新しいモデルとなる工場にしていきたい」とあいさつ。
 神事後は見学会も開かれ、出席者が坑道内部や橋りょうなどを回り、新たな鉱山へと理解を深めた。
 袰下鉱山で産出された石灰石は、新たに建設したベルトコンベヤーで大平地区まで運ばれ、そこから既存のベルトコンベヤーで運搬。採掘は龍振鉱業㈱(大船渡市)が担っている。
 5年後をめどに、大平での採掘は終了し、石灰石や骨材を採掘している坂本沢は骨材のみとするため、石灰石の採掘は袰下鉱山単独となる。
 袰下鉱山での生産は5年後から年間240万㌧を計画。現在の採掘面積は約4㌶だが、最終的には80㌶ほどにまで拡大となる見込み。
 袰下鉱山の石灰石量は約2億4000万㌧と、工場の資源量としては約100年分に当たる量を確保できるという。高品質も見込まれ、製品の付加価値向上などに期待が集まる。