新たな水産資源の確立へ 「三陸サーモン」拡大図る 大船渡と釜石、気仙沼の関係者が養殖バレー協議会設立
令和3年5月21日付 1面

大船渡市と釜石市、気仙沼市の水産関係者らによる三陸サーモン養殖バレー協議会の設立総会は19日、大船渡市大船渡町の市魚市場で開かれた。沿岸漁業の主力である秋サケは近年、著しい水揚げ数量低下が続く一方、全国的には海面養殖の動きが広がり、大船渡市内では盛川漁協がニジマスによる「サーモントラウト」の種苗育成を確立させつつある。まずは同漁協による新たな生産施設で種苗育成に取り組み、海面養殖体制の構築やブランド化も見据える。
まず盛川漁協で種苗生産
設立発起人会は南気仙沼水産加工業事業協同組合、釜石流通団地水産加工業協同組合、盛川漁協、大船渡湾冷凍水産加工業協同組合の各役員ら9人で構成。総会には発起人に加え、岩手復興局の平岩裕規局長や東北経済産業局産業部東日本大震災復興推進室の西谷剛復興推進一係長、3市の職員ら合わせて約20人が出席した。
発起人を代表し、南気仙沼水産加工業事業協の阿部泰浩理事長が「天然サケの水揚げは減少する一方で、養殖サーモンの需要は拡大している。養殖から加工まで一貫した技術が完結し、一大産地となる」とあいさつ。規約などを制定後、役員選出では会長に大船渡湾冷凍水産加工業組合の森下幹生代表理事が就いた。
森下会長は「浜ごとの動きではなく、広域的な連携でどう将来に向けて発展させるかが重要」と述べ、関係機関の連携、協力に理解を求めた。
同協議会の設立は、天然水産資源の著しい減少をふまえ、内水面漁業者や沿岸漁業者、水産物の加工・流通に関わる関係者が連携し、サーモンの種苗生産や養殖、加工、流通、販売まで事業活動の〝連鎖〟をつくるのが目的。三陸地域では複数のサーモンブランドが存在し、それぞれで新たな取り組みの研究が行われている中、連携した研究とマーケティングなどによって水産資源、経営の両面で持続可能な養殖体制確立も見据える。
事業内容には▽種苗の生産・中間育成の技術、供給先の確保に関する調査・研究・協議▽中間育成種苗の馴致(じゅんち)、養殖技術に関する調査・研究・協議▽三陸地域等の各種ブランド・地域サーモン養殖に関すること──などを挙げる。
大船渡市内では、盛川漁協がニジマス「サーモントラウト」の中間育成試験事業を進めている。幼魚を既存のサケ・マスふ化場内で育て、秋サケが出回らない夏場に出荷するほか、海上養殖を行っている各漁協への中間育成魚としての供給も見据える。
平成29年度から取り組み、400㌘程度のニジマスを2㌔程度にまで育てるノウハウを確立。本年度は、猪川町で新たな種苗生産施設の整備を進めており、今年秋までに完成する見込み。この施設で、同協議会による種苗の試験生産にも着手する。
同協議会では、種苗を8カ月程度で400㌘にまで育て、さらに6カ月をかけて出荷可能な2㌔〜2・5㌔にする育成に沿岸漁協などの協力を求めながら、広域連携による海面養殖体制構築に取り組む。さらに、三陸サーモンの販売、マーケティングの戦略検討も行う。