新型コロナウイルス/ワクチン副反応に備えを 県立大船渡病院救命救急センター・横沢センター長に聞く

▲ 横沢センター長

症状への対応 適切に
感染疑いは医療機関へ

 

 新型コロナウイルス感染症の発症を予防するためのワクチン接種が、気仙でも高齢者向けから進められている。こうした中、ワクチンによる副反応が自身や周囲に起こった場合、適切に対応するためにはどうすればいいのか、県立大船渡病院救命救急センターの横沢友樹センター長(40)に話を聞いた。 

 

 ──ワクチン接種で懸念される副反応には、主にどのような症状があるか。
 横沢 現在、接種に使われているのはファイザー社のワクチン。この副反応に関する厚生労働省の中間報告(4月30日現在)によると、先行接種者健康調査の結果では、約90%に接種部位の痛み、腫れ、かゆみといった局所症状が認められたという。次いで、全身けん怠感が約70%、頭痛が約50%、発熱が約40%、鼻水が約10%と、ほぼすべての方に何らかの副反応がみられたことが分かっている。
 一方、5月26日に同省から発表された資料によると、重篤な副反応といわれるアレルギー反応は100万投与で2・4例(0・00024%)。インフルエンザワクチンが100万投与で1例程度といわれるので、それに比べると多いが、十分少ないと考える。
 接種後の死亡例は、601万人のうち85例(約0・0014%)で、現時点では因果関係が認められたものはない。
 ──ワクチンは2回の接種が必要だが、初回と2回目で副反応に差はあるか。
 横沢 具体的な症状に差はないが、2回目の接種で多く、若い人ほど強い傾向がみられる。特に発熱は、20~30代の方で半数近くにのぼる。さらに、発熱した人のおよそ半分が38度以上を記録しており、中には40度程度まで上がる人もいる。だが、多くの人が24時間程度で解熱する。
 ──副反応が起きたら、どう対応すればいいか。
 横沢 行政では、ワクチン接種を受けた医療機関や市町村、県の窓口に相談するように呼びかけているが、夜間や休日には連絡がつかない可能性もある。
 先に示した多くの方にみられる副反応には、市販の解熱鎮痛剤が効果的。不安がある方は、事前に用意をしておいてもらいたい。
 多くの場合、症状は1日程度、長くても2~3日で良くなるので、その間、用法・用量を守って内服を続けるといい。実際、当院のスタッフにも2回目接種後の発熱に苦しんだ人が多くいるが、解熱鎮痛剤を服用してだいぶ楽になったと聞いている。
 ただし、症状が出る前から予防的に服用するのはすすめない。実際に影響があるかはまだ分からないが、動物実験では事前に解熱鎮痛剤を使用したマウスはワクチンの効果が低めだったとの報告がある。
 このほか、発熱などに備え、2回目接種後の翌日には大切な仕事を入れないとか、社内の業務に影響が出ないよう、あらかじめ従業員の接種日を分散しておくなどの対応を検討した方がいいかもしれない。
 重篤な副反応に関しては、接種後15分程度は会場で待機してもらい、経過を見る。集団接種会場には必要な薬品を用意しており、症状が出た際にはその場にいる医師が初期対応を行う。その後、救急搬送して当センターで対応することになっている。
 ──副反応で医療機関を受診する際の注意点は。
 横沢 接種部位の症状、頭痛、けん怠感、発熱、鼻水といった副反応でみられる症状のみであれば、解熱鎮痛剤を服用し、様子をみていて問題ない。発熱したからと多くの人が医療機関に集中するのは、新型ウイルスの感染拡大防止の観点からも好ましくはない。
 ただし、熱が2日以上続くか、浮腫や発疹、意識障害、呼吸困難などの重い症状、そのほか、せき、のどの痛み、味覚・嗅覚の異常、息切れなど新型ウイルスの感染を疑う症状がみられる場合は、医療機関に電話で相談のうえ、受診をしてもらいたい。
 ワクチン接種後、何かしらの症状が出る可能性は非常に高いが、命にかかわるような重篤な反応はほとんどない。事前に、解熱鎮痛剤の用意やスケジュールの調整などをしておき、接種を受けてもらいたい。

(聞き手・三浦佳恵)