魚市場南側岸壁「延長を」 市が対県要望で新規追加へ サンマ船などの待機回避見据え

▲ 市が延長整備を求めている市魚市場の南側岸壁(左側)

サンマ漁の最盛期は5隻以上の大型船が相次いで接岸する(昨年10月30日)

 大船渡市は本年度の対県要望で、大船渡漁港(大船渡町)における係船岸壁の延長整備などを新たに盛り込む方針を固めた。漁港内の市魚市場南側岸壁では大型サンマ船5隻が接岸可能だが、盛漁期には入港が重なり、待機を余儀なくされるケースが増え、関係団体も市に実現を訴えていた。市は県に対し、係船や水揚げ機能の充実強化による水産振興などに理解を求める。

 市魚市場は、県が管理する第3種漁港大船渡漁港に立地。定置網船などの地元漁船だけでなく、県内外から多くの漁船が入港する三陸沿岸の拠点的な魚市場となっている。
 特に、サンマの水揚げは、昨年まで9年連続で全国2位、本州1位を堅持。全国的には、前年の不漁を上回る深刻な不漁となったものの、大船渡港での数量は6237㌧と前年比3・2%減にとどまり、全国数量の20%を超えたほか、本州だけをみると3分の1超を占めた。
 一方、近年はサンマだけでなく、秋サケやスルメイカの記録的な不漁が続く。水産業の持続的な発展に向け、巻き網をはじめとした県外からの廻来船の受け入れ体制を整備し、安定的な水揚げ量確保が喫緊の課題となっている。
 また、平成28年には一般社団法人大日本水産会から「優良衛生品質管理市場・漁港」の認定を受けている。水揚げ時の交差汚染を防ぐ観点から、漁業種や魚種によって水揚げ場所を区分。魚種の選別やタンクでの一時保管が必要な定置網などは埋め立て埠頭(ふとう)部の閉鎖型市場で対応し、サンマやイサダ漁、巻き網船など直接車両に積み込む魚種は、専用の南側岸壁で行っている。
 南側岸壁は約290㍍で、大型サンマ船5隻が接岸可能だが、秋の盛漁期には入港が重なる。昨年11月14日にサンマ棒受網船16隻が寄港し、計713㌧の水揚げがあった際は、魚市場周辺岸壁での接岸や、海上で水揚げを待つ漁船の姿も見られた。
 市によると、盛漁期(10~12月)における1日5隻以上の入港日は昨年だけで16日あった。洋上待機する漁船は、1隻当たり平均2時間程度の〝むだ〟が生じるという。
 近年は水揚げ増強に向け、サバやイワシなど三陸沖で操業する巻き網船を積極的に誘致。昨年度の巻き網船の入港は95隻で、前年の30隻を大幅に上回った。漁船の大型化に加え、サンマの水揚げと重なる時期があり、埋め立て埠頭部で水揚げせざるを得ない状況となっている。
 また、係船岸壁は漁獲物の水揚げだけでなく、漁船設備など作業関係車両の乗り入れが伴う修繕や、休漁時における漁船乗組員の陸上へのアクセス路にもなる。昨年度まとめた市水産業振興計画でも、南側岸壁延長の必要性に言及しているほか、昨年開催した市政懇談会でも話題に上った。
 さらに、施設を運営する大船渡魚市場㈱や水産関連団体が連名で、市に対して県に働きかけるよう求めていた。岸壁南側は災害危険区域で東日本大震災以降〝手つかず〟の状態となっており、土地の有効活用といった面からも注目を集める。
 市は対県要望で、衛生品質管理の充実強化や水揚げ増強に向けて▽市魚市場南側の延長などにより、係船や水揚げ機能の充実を図る▽漁船の大型化が進んでいることから、岸壁の延長においては十分な推進を確保する──などを掲げる予定。
 市農林水産部の鈴木満広部長は「ここ数年、水揚げが集中しており、海で待たせる機会が増えた。早く水揚げして、早く漁場に戻りたい船側の意向もある。大型船が同時に水揚げできるよう働きかけたい」としている。
 対県要望は毎年、翌年度の予算編成に入る時期に合わせて行っており、本年度は8月ごろの実施を計画。現段階の要望数は、国際リニアコライダーの誘致・実現や大船渡病院の医療体制強化などを含む14項目で調整が進められている。