白石峠整備計画を審議 県の大規模事業評価専門委 詳細データ提示求める声も 盛岡で

▲ 県がまとめた白石峠整備計画について審議

 岩手県大規模事業評価専門委員会(専門委員長・加藤徹宮城大学名誉教授、委員8人)は8日、盛岡市のエスポワールいわてで開かれ、国道107号の大船渡市~住田町に位置し、県が来年度から10年間での整備を見据える白石峠区間に関する諮問審議が行われた。急カーブ、急勾配を解消する延長2・3㌔の新トンネル計画などに対し、委員からはコンテナ貨物積載車の通行量や救急搬送の実態など、より詳細なデータ提示を求める声が出た。来月以降も審議を重ね、年内の答申取りまとめを目指す。
 本年度初の開催で、オンラインを含め委員7人が出席。今後の開催日程の確認に続き、審議では県が5月の大規模事業評価で「事業実施が妥当」とした白石峠整備が議題となった。
 計画延長は2・7㌔で、このうちトンネルが2・3㌔。住田町内には橋梁も設ける。事業期間は令和4年度からで、用地着手予定は5年度、工事着手は6年度、供用開始予定は13年度となっている。総事業費は94億円と試算する。
 県側は路線の役割として、重要港湾である大船渡港と中枢中核都市である盛岡市や、産業集積が進む県南地区を結ぶ物流機能を強調。同港における昨年度のコンテナ貨物取扱量を地域別にすると、北上市や奥州市などの県南地区が39%、盛岡市や花巻市などの県南地区が33%との割合が示された。
 また、第三次救急医療施設である大船渡病院から内陸への救急搬送件数が令和元年度は84件に達している。気仙地域の患者のうち、地域内で入院が完結しているケースは6割にとどまり、残りは盛岡などで入院。国道107号は、内陸への救急搬送でも利用される路線となっている。
 現在の白石トンネルを挟む約3・5㌔の区間には、交通量などから本来求められる基準値を超える急勾配区間が大船渡市側の約700㍍にあり、さらに両市町には急カーブが1カ所ずつある。トンネル内の幅員が狭く、大型車両の通行が困難となっているのが現状だ。
 県側は総合評価として▽安全で円滑な交通機能が確保される▽地元からの強い要望がある▽環境への影響が少なくなるよう配慮する▽現道改良など代替案を検討した結果、妥当であると判断──との観点から「事業実施」に至ったとした。
 委員からは「コンテナ貨物が多くなっているというが、実際にどれくらい通っているか。釜石を経由する三陸沿岸道路と比べ、数分しか変わらないのでは」「世田米から宮守の間でも、大型車が渋滞する区間がある。大船渡から盛岡までの区間の中で、今回の整備がどのように導き出されたのか」といった声が出た。
 救急に関しては「天候面など、ヘリコプターによる搬送が適さない状況はどれくらいあるか」といった発言や、内陸部への救急搬送が増加傾向にある要因に関する質問も。事業を進める中で、工事費用が増大して費用対効果が低下する可能性の有無も話題となった。
 事業の妥当性や、県がまとめた総合評価そのものに踏み込んだ意見はなかった。加藤委員長は「たくさんの質問があった。委員が共通認識を持てるような資料を出してほしい」などと述べた。
 来月の委員会は調査活動を計画。8月の開催を見込む3回目の委員会でも、引き続き審議が行われる。