新型コロナウイルス/滝観洞に新たな〝客層〟 修学旅行での来訪が増加 感染拡大で訪問先に変化

▲ 修学旅行での来訪が増えている滝観洞。10日には花巻市の小学校が訪れた

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東北6県を中心に本県を修学旅行先とする学校が増加している。住田町上有住の滝観洞には昨年度中は、小学校4校、本年度は6月10日現在で2校が訪問。新型ウイルスの感染拡大前にはなかった客層が生まれており、コロナ収束後の継続的な訪問に期待が高まる。

 

 県商工労働観光部がまとめた「いわての観光統計」をみると、令和2年の本県の教育旅行客の入り込み数は、学校が延べ4243校、児童生徒が22万5480人回。学校数は前年比1000校(30・8%)増、児童生徒数は同1万1695人回(5・5%)増となった。
 震災前の平成22年と比べると、学校数は1789校(72・9%)増、児童生徒数は3万3644人回(17・5%)増となり、同年以降で最高を記録。特に、本県を含む東北6県の来訪が多い。
 新型ウイルスの感染拡大を受けて、県外ではなく県内を修学旅行先としている本県の小中学校が増加していることも要因として考えられ、県商工労働観光部では「今年も同様の傾向となるのではないか」と予想する。
 コロナ禍によって客層が変化した観光地の一つ、滝観洞の周辺は長らく交通の難所とされてきたが、平成20年に釜石花巻道路の「滝観洞インターチェンジ(IC)」が供用開始。この効果により、同年〜22年の年間入洞者は1万人以上で推移した。
 東日本大震災以降は4ケタ台が続いたが、31年3月には釜石花巻道路が全線開通し、三陸沿岸道路とも接続。内陸部はもちろん、気仙両市からのアクセスも向上したことで、同年の入洞者は1万1157人に増えた。
 しかし、新型ウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令に伴っての入洞休止、その後のイベント中止もあって昨年度の入洞者は約6800人と2年ぶりに1万人を割った。
 その一方で、昨年度は新型ウイルスの影響によって県外への修学旅行を見合わせた県内小学校の来訪が4校あり、今年もすでに小学校2校が訪れている。これまで、夏休み中に近隣市町村の子どもたちが訪れることはあったが、修学旅行での来訪はなかったといい、新たな客層が生まれている。
 今月9日には奥州市江刺の伊手小学校、10日には花巻市の太田小学校が修学旅行の一環として滝観洞を訪問。このうち、太田小学校は例年なら宮城県仙台市を修学旅行先としていたが、新型ウイルスの感染が拡大した昨年から県内で実施。今年は1泊2日の日程で大槌町や釜石市、陸前高田市、住田町、盛岡市を巡った。
 同校の梅木康行校長は「保護者や児童にアンケートを行ったところ、多くが県内を希望した。震災や復興を学ぶとともに、県内の観光地を知ってほしいということで沿岸部や滝観洞を回るルートを設定した」と話す。
 滝観洞では、9月にも県外の中学校から修学旅行での訪問の予約が入っているといい、滝観洞観光センターを運営する住田観光開発㈱の千葉孝文取締役は「コロナによって県内に目を向ける動きが出てきている。三陸沿岸道路で沿岸と内陸が結ばれたことによって滝観洞にも立ち寄りやすくなっているので、さらに周知を図り、コロナ後の来訪につなげていきたい」と展望を語る。