近所付き合い「減った」4割超 市などによる災害公営住宅アンケート 家賃・生活費への不安高く

 大船渡市と岩手大学研究支援・産学連携センター復興・地域創生ユニットは、一昨年から昨年にかけて行った市内の災害公営住宅入居者に対するアンケート結果をまとめた。地域コミュニティーの現状や、生活上の課題などを調査。東日本大震災前に比べ、近所や地域の人とかかわる機会が減ったと答えた割合は4割を超えた。今後のコミュニティーづくりには約半数が「支援が必要」と答えたほか、声をかけられれば関わりを持ちたいと考える層の実情も浮き彫りに。生活上の不安では「家賃・生活費」が高かった。

 

自治活動支援の必要性も

 

 この調査は、自治体などによる自助・公助を促す支援や自治組織の組織運営などに役立ててもらおうと実施。居住者全体の意識を把握する観点から、入居者のうち13歳以上全員を対象とした。
 調査対象数は1175人で、無記名式で紙面に記入。一昨年12月から昨年8月にかけて調査を行い、689人(58・6%)から回答が寄せられた。
 回答者の78・2%が、災害公営住宅に2年以上居住。居住人数で最も多かったのは2人で32・7%。ひとり暮らしは32・5%、3~4人は21・9%だった。
 「震災前と比べ、ご近所や地域の人と関わる機会は、どの程度変化したか」の問いに、最も多かった回答は「減った」で42・5%。「変わらない」は31・9%で、「増えた」は10・2%だった。
 住民交流が減りつつある現状が浮かび上がり、特に55歳以上で「減った」と回答したのは約50%に上った。年齢が上がるにつれて、関わりが減る傾向にある。
 「減った」と答えた割合は、団地ごとでもばらつきが見られた。17・1%と低かった大船渡町の川原アパートでは、震災前の居住地が同じ川原地区の入居者が多く、仮設住宅生活時の支援者のつながりを生かしながら、集会所などでの催事を積極的に行い、住民間の関わりが維持されたとみられる。
 また、集会所や地域の公民館の利用頻度に関しては「1回もない」が41・5%で、「年に数回」は37・7%。利用は一部の入居者に限られ、利用者は65歳以上の高齢者が多い実態も分かった。
 「公営住宅や地域に、困った時に相談できる人は、どのくらいいるか」の問いでは、最も多かった回答が「1~2人」で42・7%、次いで「いない」が26・9%だった。
 「緊急時に避難する際、最も頼りにできる人」を尋ねたところ、ひとり暮らしの回答者のうち、30・4%は「いない」と回答。この平均年齢は64・5歳で、高齢者の避難も課題として浮かび上がった。
 公営住宅や地域住民らとの関わりについての問いでは「自ら声をかけて関わりたい」が10・9%と低く、一部の住民によって地域のつながりが維持されている現状も明らかに。一方で「声をかけられれば関わる」は33・8%で、こうした層の〝掘り起こし〟が地域活動のカギになりそうだ。
 居住意向では55%が「今後も住み続ける」と回答。「転居を考えている」は8・4%、「分からない」は35・7%だった。複数回答も受け付けた不安や課題に関しては、家賃・生活費が48・8%で際立って高かった。
 コミュニティーづくりを意識した活動について「必要と思う」は46・6%、「大いに思う」は4・6%で、合わせて5割を超えた。支援に必要な期間では「永続的に」が38・4%と多く、以下、5年程度が6・0%、3年程度が8・7%、1年程度が7・5%。「必要ない」は20・6%だった。
 今回のアンケートは、各団地別の回答を明記しているのが特徴。入居者一人一人に対して、コミュニティーや生活不安を尋ねるのは初めてという。報告書は団地各世帯などに配布しており、市などでは今後のコミュニティーづくりの活用に期待を込める。
 調査にあたった岩手大学の船戸義和特任助教は「地域活動では、声をかける時にいくつか工夫も必要で、例えば清掃や防災活動では、役割分担を細かくして、手伝ってほしいことを分かりやすく示すことも大切。災害公営住宅は課題先進地でもあり、こうした傾向は地域運営でも参考になるのでは」としている。